新環境相にボルヌ前交通担当相を任命、野党からは政権の環境政策を批判する声も

(フランス)

パリ発

2019年07月19日

フランスのマクロン大統領は7月16日、公費の不正利用などの疑惑報道を受け、同日朝に辞任したフランソワ・ド・リュジ環境移行・連帯相の後任に、同相付の交通担当相だったエリザベット・ボルヌ氏を任命した。ド・リュジ氏の公費不正利用疑惑は、クリーンな政治を掲げるマクロン政権にとって痛手となる。突然の辞任に続く新大臣の即日の任命は、反政権運動に火が付くのを恐れて早期の幕引きを図ったものとみられる。

ボルヌ氏は、理工系エリート養成機関であるエコール・ポリテクニークを卒業後、運輸・インフラ分野で官僚ポストを歴任し、フランス国鉄(SNCF)の戦略部長やパリ交通公団(RATP)のCEO(最高経営責任者)などを務めた。2017年5月、就任したばかりのマクロン大統領により交通担当相に抜てきされ、マクロン大統領が公約に掲げたSNCFの近代化改革を2018年に実施した。マクロン大統領の信頼は厚いものの、政治家としての経験がなく、環境分野での知名度も低い。

マクロン政権は、5月の欧州議会選挙における環境派グループの躍進を受け、フィリップ首相が6月に政権後半の優先政策課題として、環境対策を重視する施政演説を行ったばかり(2019年6月14日記事参照)。しかし、環境移行・連帯相が交代するのは政権発足以降2回目で(2018年9月11日記事参照)、ボルヌ氏の環境分野での実績が乏しいことから、野党議員から「一貫性がない」「環境政策の終焉(しゅうえん)」などと、政府の政策運営を批判する声が上がっている。

ボルヌ新環境相には、マクロン政権の環境政策の柱となる循環経済および廃棄物規制強化に関わる法案(2019年7月19日記事参照)、環境に優しい交通手段への移行を推進するモビリティー法案、2050年でのカーボンニュートラルを目指すエネルギー・気候変動関連法案の3つの法案を成立させることが当面の課題となる。

(山崎あき)

(フランス)

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