モディ首相、G20で米トランプ大統領とイラン関係、5G、貿易など協議

(インド)

ニューデリー発

2019年07月01日

インドのモディ首相は6月27日から3日間、日本に滞在し、大阪で開催されたG20サミット(首脳会議)に出席した。サミット本会議のほか、日本や米国、韓国などと2国間協議を実施、さらにマルチの枠組みとして日本、米国、インドの3国間、ロシア、中国、インドの3国間協議なども実施した。

G20をめぐり、インドで最も注目されたトピックは、米国との2国間協議だ。インドは6月15日、米国から輸入する28品目に対する輸入関税の引き上げを発表。5月31日にトランプ米大統領がインドを一般特恵関税制度(GSP)の対象から除外するなど、貿易をめぐるあつれきが表面化していた。G20直前の6月25日にはポンペオ米国務長官が訪印し、モディ首相やジャイシャンカル外相と面談したが、米国との協議前日の27日にトランプ大統領が「インドは米国に対し高関税をかけ続けており、これは許容できるものではない」とのツイッターを投稿し、協議の行方が不安視されていた。

今回の米印首脳会談で、トランプ大統領は「インドとの関係はこれまでにないほど良好」と語り、モディ首相の総選挙での勝利をたたえるなど友好的なものとなった。インドのゴカレ外務次官によると、米国が原油の禁輸制裁を続けるイランとインドとの関係、第5世代移動体通信システム(5G)化への取り組み、貿易関係、防衛協力が議論の大きな柱となった。インド外務省は6月28日に「非常に生産的でオープンな会議を持つことができた。今後も話し合いを続けていく」と発表しており、貿易面での両国の緊張関係はいくらか緩和されたかのようにみえる。

インドとイランの関係について、モディ首相はトランプ大統領に対し、これまでインドは石油輸入の10%程度をイランから賄っており、エネルギー確保上の懸念に加え、イランにインド系住民も多く暮らす事情を説明、イランの安定性維持への理解を求めたとされる。5G化の取り組みについては、米国が中国通信大手ファーウェイの覇権拡大を阻止する方向性を示しているのに対し、インド政府は同社によるインドでの5G運用試験実施への参加を認める方針を示している。同首脳会談では、インドは10億人規模の携帯電話ユーザーを抱える世界第2の市場で、インドの方向性が世界の通信の方向性に大きく影響を与えるという共通認識の下、インドと米国がどのようにこのアジェンダに取り組むかについて協議を続けるとした。

6月29日に開催された米中首脳会談では、米国による対中制裁の追加関税措置発動の見送りや、ファーウェイへの輸出制限緩和、頓挫していた通商協議の再開が発表された。これを受けてインドでは、「米中の貿易摩擦が継続することで、インドが代替輸出地としての地位を獲得する可能性もあり、インドが利益を得る場面もあり得る」「米中の貿易摩擦が解消することは世界経済にとって明るいニュース。こうした事態が再発しないような明確な合意を目指すべき」などと、専門家からはさまざまな意見が聞かれている。

(古屋礼子)

(インド)

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