ティチーノ州ルガノで対日投資誘致セミナー開催
(スイス)
ジュネーブ発
2019年06月10日
スイス南部ティチーノ州ルガノで5月21日、ティチーノ商工会議所が対日投資誘致セミナーを開催した。同州はイタリア語圏で、チューリヒとミラノの間に位置し、両市との関係も深い。人口密度の高さと最先端の研究機関の存在が特長で、医薬品・IT分野に強みを持つ。最近約10年間の経済成長率はスイス全体のそれを上回っている。ルガノでは避寒客の富裕層向け資産管理が発達しており、スイス第3の金融街だ。セミナーへは、ルガノだけでなく、イタリアの近隣都市から、日本との取引実績や日本への関心を持つビジネス関係者など約50人が参加した。
クレディ・スイスのオレリー・バルテール副社長は、日本の経済状況は直近の国際的な緊張によって減速傾向にあるものの、データを見れば、就業人口は増加し、コーポレート・ガバナンスも改善し、安定していると述べた。他方、対日貿易赤字を警戒する米国の経済政策のリスクに言及し、10月に予定されている消費税引き上げがGDPに対して0.6%の引き下げ要因となることも指摘した。
スイス外国企業誘致局(S-GE)が在日スイス大使館内に設置した第三セクターであるスイス・ビジネス・ハブの輸出促進局上席商務官の和田直子氏は、超高齢化社会の日本では、ジェロンテック(介護・アクセシビリティー機器開発などの高齢化対応産業)、医療、クリーンテック(省エネ・再生エネ技術やリサイクル技術など)の分野でスイス企業に多くの商機があると述べた。
和田恭ジェトロ・ジュネーブ事務所長は、洗練された巨大マーケットやイノベーションハブ、優れたビジネスインフラなどを挙げて、日本の魅力的な投資環境を紹介した。
日本が主要市場の1つである原薬製造のセルビオス・ファーマのガブリエル・ヘリング代表取締役は日本とのビジネス経験を踏まえ、日本では企業として信頼を得る前に、人物として信頼される必要があるとして忍耐がカギだと語った。
日本とのビジネス経験のある参加者も少なくないため、質疑応答では、高齢化の影響や、働き方改革の今後など、かなり突っ込んだやり取りもあり、日本市場に対する高い関心が示された。
講演資料はティチーノ商工会議所のウェブサイトからダウンロードできる。
ティチーノ商工会議所は1917年に創設され、会員企業・団体数は7,000強、海外展開にも熱心で、2018年はロシア、カザフスタン、中国にミッションを派遣した。日本と継続的にビジネスを行っている会員企業も複数あり、日本との協力に前向きだ。
(和田恭)
(スイス)
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