ロシア最大の経済イベントでデジタル分野など日ロ間協力を議論

(ロシア、日本)

サンクトペテルブルク発

2019年06月24日

ロシア最大の経済イベントであるサンクトペテルブルク国際経済フォーラム(SPIEF)(2019年6月14日記事参照)の枠内で、ロシアNIS貿易会(ROTOBO)、日ロ間のビジネス支援を手掛けるロシアの団体「露日ビジネスカウンシル」は6月8日、ビジネス対話「日本とロシア:日ロ協力の新たな地平」を開催した。6月28、29日に大阪で開催予定のG20首脳会議を見据え、日ロ両国関係者が2国間の経済協力状況を報告し、デジタル分野を中心とした今後の交流の方向性を示した。

写真 ビジネス対話の様子(ジェトロ撮影)

ビジネス対話の様子(ジェトロ撮影)

マクシム・オレシキン経済発展相は、2019年第1四半期(1~3月)の日ロ間の貿易額が前年同期を上回っていることを指摘。日本企業によるハバロフスク空港の新旅客ターミナル建設や、ボロネジ市でのスマートシティー形成といった個別案件を紹介し、日ロ連携の成果をアピールした。さらに、発展の余地がある分野としてハイテク関連産業を挙げ、モスクワ郊外に位置するイノベーション振興拠点「スコルコボ」を活用した両国企業の一層の連携に期待を寄せた。

関芳弘経済産業副大臣は、労働生産性向上の支援を目的としたロシア人研修生の受け入れや、極東地域での風力発電事業参入など、「8項目の協力プラン」(注)に基づく両国連携の進展を報告。デジタル分野では、両国のデジタル関連イベントへの参画や、日本国内でのロシア企業によるセミナー・ピッチイベントを通して、デジタル関連スタートアップ企業の連携を進める方針を明らかにした。

日本たばこ産業(JT)の岩井睦雄副社長は、自社がロシア最大のたばこ関連企業だと紹介した上で、ロシア政府やユーラシア経済連合が推進する製品マーキング(2019年4月1日記事参照)制度へのデジタル技術を活用した取り組みを説明。他の消費財に先駆けてたばこがこの制度の対象となったため、製品追跡システムをいち早く導入したとし、その結果、税収確保や販売の透明性向上に寄与しており、このノウハウや経験を他分野での活用に貢献したいと述べた。

ジェトロの入野泰一理事は、日本企業約200社のロシアビジネスを支援し、20件の成功事例を創出した「中小企業交流」や、ロシア8地域の知事を招いて各地域の魅力を紹介するフォーラム開催など、「地域間交流」の促進に向けたジェトロの取り組みを紹介。今後はそれらに加えて、デジタルやイノベーション分野でもビジネス支援を強化すると報告した。玉城デニー沖縄県知事は、同県の主要産業が観光であることに加え、重要産業として位置付けるIT産業への取り組みや、物流のハブとしての機能を紹介し、沖縄とロシアの経済交流の可能性を提案した。

(注)2016年5月にソチで行われた日ロ首脳会談で、安倍晋三首相がプーチン大統領に提案したプラン。健康寿命伸長、都市環境整備、中小企業交流・協力の拡大、エネルギー、ロシアの産業多様化・生産性向上,極東の産業振興・輸出基地化、先端技術協力、人的交流の拡大の8項目から成る。

(一瀬友太)

(ロシア、日本)

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