政府ICT調達額の6割、スマート国家のデジタル行政の基盤づくりに

(シンガポール)

シンガポール発

2019年06月06日

シンガポール政府テクノロジー庁(GovTech)は5月28日、テック業界向けの説明会で、2019年度(2019年4月~2020年3月)に予定しているスマート国家(注)関連の政府調達額の約6割を、デジタル身分証明や国土のセンター設置などデジタル行政の基盤づくりに充てると発表した。2019年度のスマート国家がらみの情報通信技術(ICT)調達額は25億~29億シンガポール・ドル(約1,975億~2,291億円、Sドル、1Sドル=約79円)となる見通し。また、この8割については、中小企業が応札可能な案件となるとしている。

GovTechは、首相府管轄下の行政サービスのデジタル化を統括する機関(2017年6月5日記事参照)。GovTechが構築を進めるデジタル行政サービス基盤は、(1)政府機関がデジタル行政サービスを構築する際の共通インフラ基盤となる「スマート政府テック・スタック(SGTS)」、(2)国民、企業のデジタル認証「国家デジタル身分証明(NDI)」、(3)国土全体の街灯にセンターなどを設置してスマート化する「スマート国家センサー・プラットフォーム(SNSP)」、(4)国民目線の共通行政サービス・アプリ「モーメント・オブ・ライフ(MOL)」、(5)公務員業務のデジタル化「デジタル・ワークプレイス適応化プログラム(ADWP)」の5つ。

このうち、NDIの構築では、病院の入院手続きや銀行口座の開設などの際に、QRコードをスマートフォンにかざすだけで本人認証を可能にする「SG認証(SG Verify)」を2019年第3四半期中に導入する予定だ。シンガポール政府は2018年10月に、電子行政サービスを利用する際に必要な個人の暗証番号「シングパス」の携帯アプリ「シングパス・モバイル」の導入を開始している。SG認証サービスが始まれば、このシングパス・モバイルをダウンロードしたスマートフォンを使ってQRコードを読み取ると、本人認証され、申請書類などの記入などの手続きが必要なくなる。

また、SNSPの構築では、シンガポール郊外のワンノースとゲイランの2地区で2019年下半期に、街灯にセンサーやカメラを設置して、空気の汚染や混雑などのモニターのほか、治安や都市計画などに活用する実証実験を行う予定だ。

(注)シンガポール政府は2014年11月から、最新ICT技術を活用して、豊かな暮らしとデジタルエコノミーを実現するスマート国家を目指し、さまざまなプロジェクトを同時並行で推進している。2018年6月には、スマート国家構想に基づく政府のデジタル化計画「デジタル政府ブループリント(Digital Government BlueprintPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))」を発表している。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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