アフリカ輸銀の年次総会をモスクワで開催、非資源分野での協力を強調

(ロシア、アフリカ)

欧州ロシアCIS課

2019年06月25日

日本では第7回アフリカ開発会議(TICAD7)が8月28~30日に横浜で開催されるが、ロシアでも、アフリカ諸国との関係強化に向け、10月24日にロシア南部ソチ市で「ロシア・アフリカサミット」(注)を初めて実施する。これに先駆け、アフリカ輸出入銀行(以下、アフリカ輸銀)が第26回年次総会を6月20~22日にモスクワで開催した。

アフリカ輸銀は1993年に設立され、アフリカ内外の貿易促進に向けて貿易金融・プロジェクトファイナンス、信用保証の供与、情報・アドバイザリー支援を行う多国籍金融機関。アフリカ諸国政府、アフリカの官民の機関投資家、アフリカ域外の金融機関・民間投資家によって構成される。2018年末時点での総資産は134億ドル。アフリカの51カ国が出資。英国スタンダードチャータード銀行、インド輸出入銀行、中国輸出入銀行など、アフリカ域外の銀行が戦略的パートナーとして参画している。ロシアは2017年からロシア輸出センターが出資。本部はエジプトのカイロ。アフリカ輸銀がアフリカ域外で総会を開催するのは、2012年の中国に次いで2回目。

ロシアのメドベージェフ首相は総会の冒頭で、「ロシアとアフリカ諸国はソ連時代から友好関係を築いてきた。この関係を未来に向けてさらに発展させたい」と語った。また、昨今の保護主義や貿易紛争が世界の原材料市場、金融市場を不安定にし、それが債務負担の拡大や、経済、社会、技術分野の不平等につながっていると指摘した上で、「ロシアとアフリカ諸国はこのようなグローバルレベルの問題に共同で対処できる」と述べた。

ロシアの対アフリカ経済活動はこれまで、石油・天然ガスや鉄鉱石、ボーキサイト、ダイヤモンドなどの鉱物資源開発への投資が中心だったが、近年は非資源分野への投資にも取り組んでいる(2019年5月10日付地域・分析レポート参照)。同首相は、資源開発だけでなくハイテク分野への投資が重要とし、武器輸出公社ロスオボロンエクスポルト、宇宙産業企業エネルギヤ、国営開発金融公社VEB.ruによる通信・テレビ衛星システムの立ち上げのほか、原子力公社ロスアトムによる案件開発事例を紹介。「1990年代はアフリカでのロシアの存在感は小さかったが、今は地質・鉱業、エネルギー、工業、農業、漁業分野での共同開発ができるようになった」述べた。さらに、2018年のロシアとアフリカ地域の貿易額は前年比で17%拡大し、ロシアにおけるアフリカ人留学生数は1万7,000人に達していると説明した。

主要経済紙「コメルサント」(6月22日)は、中国が対アフリカ投資を強化している中、ロシアが入り込む余地について、「単なる投資では不十分で、(技術供与を伴う)アフリカ企業との合弁事業などが必要となる」としている。

(注)ロシア大統領府によると、「ロシア・アフリカサミット」には、アフリカ大陸の全ての国の首脳とアフリカ域内の連合体・機関の代表者をロシアに招待し、政治、経済、技術、文化などの面での交流発展について議論を行う。

(齋藤寛)

(ロシア、アフリカ)

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