連邦政府、2035年までのスポーツ産業発展戦略を承認

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2019年06月28日

日本では2020年夏の東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けてスポーツ関連産業の振興が行われているが、ソチ冬季オリンピック(2014年)やサッカー・ワールドカップ・ロシア大会(2018年)が開かれたロシアでも同様の動きがみられる。連邦政府は6月13日、「2035年までのスポーツ産業発展戦略」を承認した(2019年6月3日付連邦政府指示第1188-r号)と発表した。本戦略は、最新技術を用いた競争力あるスポーツ用品製造業の育成を目指すもので、2018年5月7日付大統領令204号「2024年までのロシア連邦発展戦略の課題と国家目標」(2018年5月8日記事参照)の達成に寄与する内容となっている。

本戦略では、優先分野として、a.国産スポーツ用品(注)の需要喚起、生産および輸出拡大、b.スポーツ用品の開発に向けた研究開発および知識の蓄積、c.スポーツ用品分野の標準化の整備、高品質製品の生産、不正流通対策、d.スポーツ用品の開発・生産に関わる専門家の育成、などを掲げている。

国産スポーツ用品の需要の喚起に向けては、ロシアにおけるスポーツ人口の拡大を目指す。2006年のスポーツ人口は全人口の13%にすぎなかったが、2017年には36.8%に増加した。これを今後、2024年には55%まで引き上げることを目標としている。とりわけ、30~54歳、55~79歳の年齢層のスポーツ人口の増加に注力し、2017~2035年の間に、それぞれ21.6%→57%、5.8%→40%に拡大させることを目指し、これに向け、9,000カ所のスポーツ競技場の建設、既存の競技場2万カ所の改修を行う。

供給面をみると、2017年のロシアにおけるスポーツ用品市場は5,340億ルーブル(約9,078億円、1ルーブル=約1.7円)で、うち国産品が占めるシェアは11%、金額では610億ルーブルだった。今後は、技術開発や生産最適化、品質管理改善などによって外国製品に対する競争力を強化し、国産品シェアを2024年までに30%以上に引き上げることを目指す。輸出にも注力し、2018年に7,650万ドルだったものを、2035年には2億2,070万ドルまで増やし、それに伴って、2035年の鉱工業生産を2018年比で2.5倍に拡大させることを目標にしている。

企業規模の成長も考慮しており、ロシアには現在、スポーツ用品の生産メーカーが約300社あるが、大企業2%、中規模企業25%、小規模企業27%、マイクロ企業46%という割合になっており、小規模以下の企業が約4分の3を占めている状況だ。これを2035年にはそれぞれ6%、35%、30%、29%にまで底上げできるよう、企業規模の発展を後押しするとしている。

(注)本戦略では、スキー・同製品、スケート靴、体育・体操・陸上用品、レスリング用品、一般的なトレーニング用品、サッカー・ハンドボール用品、ホッケー用品などとしている。

(齋藤寛)

(ロシア)

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