中銀が2019年の経済成長率見通しを0.3ポイント引き下げ

(メキシコ)

メキシコ発

2019年06月06日

メキシコ中央銀行は5月29日、2019年第1四半期(1~3月)の経済報告を発表し、その中で2019年の実質GDP成長率見通しを、従来の1.1~2.1%から0.3ポイント引き下げ、0.8~1.8%とした。その主な理由として、第1四半期の経済が予想を下回る低水準だったこと、米国の製造業の減速により今後の輸出の低迷が予想されることを挙げている。第1四半期の経済低迷の要因としては、年始に実施した燃料盗難対策により、燃料のパイプライン輸送が部分的に停止され、一部の地域で深刻なガソリン不足が発生したこと、ミチョアカン州で教員組合(CNTE)による鉄道封鎖が発生して経済活動に大きな影響が出たこと(2019年2月15日記事参照)、北東部タマウリパス州の国境都市マタモロスで過激派労組によるストライキが発生し、同地域保税加工業の操業が一時停止に追い込まれたこと、などの一時的な要因が影響したことを挙げており、今後、内需は緩やかに回復に向かうと想定している。

中銀は、経済成長率見通しの引き下げに伴い、正規雇用創出数の見通しも引き下げており、2019年の正規雇用創出として、従来の62万~72万人から53万~63万人に大幅に引き下げた(表参照)。インフレ率については、足元で農作物などの価格が高止まりしていることを受け、年末時点の見通しを従来の3.4%から3.7%に0.3ポイント引き上げているが、目標の4%は下回るとしている。なお、中銀は2020年について、インフレ率の見通しを2.7%から3.0%に引き上げた一方、GDP成長率や正規雇用の増加数については変更していない。

表 政府、中央銀行、民間部門の2019年マクロ経済見通し

アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領は5月30日の早朝記者会見において、「中央銀行の独立性は尊重するが、自分は別のデータを持っており、経済は好調に推移している。その証拠に、中央銀行が経済成長率見通しを引き下げた昨日もペソの対ドル為替相場は上昇した」と語っている。

治安悪化を懸念する企業家が増加

中銀は、国内各地の企業家に対して経済成長を阻害する要因についてのアンケート調査を定期的に実施している。3月末時点で経済成長を阻害する3大要因として、企業家が最も多く挙げたのが「治安の問題」で、1月末時点の9.2%から12.2%に上昇した。そのほか、「原材料など投入財の値上がり」(11.3%→11.9%)、「国内政策に対する不安」(8.8%→8.9%)を挙げる企業家が多い。治安については、2019年第1四半期の殺人発生件数が8,493件と、1997年以降で最悪の水準だったことが影響している。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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