国民の大半は移民流入対策が不十分と認識

(メキシコ)

メキシコ発

2019年06月03日

メキシコ政府は5月31日、マルセロ・エブラル外相をワシントンに派遣した。アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領の書簡(2019年5月31日記事参照)を携え、中米諸国からメキシコを経由して米国に流入している不法移民問題を理由とする、メキシコ産品への追加関税賦課を回避するため、移民流入対策について話し合う。AMLO政権は人道主義を重視し、合法的にメキシコに入国する外国人を強制送還することはしていないが、対策が甘いと批判する声も多い。

4月13~21日に有力世論調査会社コンスルタ・ミトフスキーが実施した調査によると、「現政権は移民流入対策を十分に行っているかどうか」という質問に対し、39.5%が「何もしていない」、31.6%が「部分的な対策にとどまっている」と回答し、「とり得るべき対策を全てとっている」との回答は25.3%にすぎなかった。また、移民がメキシコに滞在できるように就労許可を与えることについて、賛成と回答したのは34.5%で、反対が60.4%を占める。現政権の人道主義的な移民対策は、必ずしも世論を反映したものではないようだ。

現政権下で人道主義による訪問者ビザの発給が急増

内務省の入国管理データによると、現政権下で「人道主義的な理由に基づく訪問者ビザ」の発給が急増している。同ビザは、政治亡命や難民申請など人道主義的な理由でメキシコへの移住を目指す外国人が、最長1年間メキシコに滞在することを認めるもので、同ビザの取得者は、移住が実現するまでの間、就労することも可能だ。2018年以降の同ビザの発給件数をみると、中米諸国からの移民キャラバンが本格化した同年後半から増加傾向にあったが、現政権下の2019年1月と2月に爆発的に増加している。2019年1~3月の同ビザ発給件数は1万9,967件に達し、前年同期比8.3倍となっている(表参照)。

表 人道目的の一時滞在ビザ国籍別発給件数

同ビザの発給を受けた外国人のうち、ベネズエラ人については主にメキシコへの移住が目的だが、ホンジュラス、エルサルバドル、グアテマラなど中米諸国の移民の場合、メキシコを通過するために利用されている。同ビザの発給要件を厳格化し、メキシコを通過して、米国に入国することを目的とする中米移民の流入を防止すべきだという指摘は多い。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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