ジェトロ、米中通商摩擦と日本企業への影響に関するセミナーを大阪・東京で開催

(米国)

米州課

2019年05月27日

米国の中国原産品に対する追加関税措置や、華為技術(ファーウェイ)への輸出規制など、米中通商摩擦が激化し、ビジネス環境の先行きが不透明となる中、ジェトロは、世界各地で事業展開をしている企業に対して国際通商分野のアドバイスを行っている米国弁護士の村瀬悟氏、伊藤嘉秀氏2人を講師に招いたセミナーを、5月16日に大阪、同22日に東京で開催した。合計で285人が参加する盛況ぶりだった。

写真 東京会場の様子(ジェトロ撮影)

東京会場の様子(ジェトロ撮影)

セミナーでは、米国の政治や対外政策の多くが2020年の大統領選挙を考慮して展開されており、通商問題も例外ではなく、今後も政治情勢の影響を強く受けるとした。米国では、中国を「戦略的競争相手」と位置付け、通商面のみならず、投資規制や輸出規制、大学・研究機関、法執行など多くの分野で中国を念頭に置いた対抗策が実施され始めているという。

両講師は、米中間の対立の早期解決が見いだせない中、日本企業は中国や米国での活動の有無にかかわらず、投資・M&A、研究開発、法令コンプライアンス、雇用・人事などを含め、ビジネスのさまざまな場面で米国の対中政策の影響を受ける可能性があると指摘した。例えば、米国の輸出管理法については、規制の対象が先端技術や基盤技術などにも拡大するなど規制の強化が進んでいる点や、「再輸出」規制(注1)や「みなし輸出、みなし再輸出」規制(注2)について留意する必要があるとした。

日本企業が取るべき対応策として、投資規制や輸出管理強化など関連法令を踏まえたビジネスパートナーの検討やコンプライアンス体制の強化などを挙げ、急激な変化に備えるとともに、中長期的視野に立った戦略的事業計画策定の必要性を話した。進出先での貢献(これまでの投資や雇用創出の実績など)を日ごろからPRすることも重要だという。

写真 講師の村瀬弁護士(左)と伊藤弁護士(ジェトロ撮影)

講師の村瀬弁護士(左)と伊藤弁護士(ジェトロ撮影)

セミナー終了後も参加者が個別に相談するなど、昨今の米中対立をめぐる政治・経済情勢の変化への対応策について、企業等関係者の関心の高さがうかがわれた。

(注1)米国から輸出されたものが、その後、輸出先から第三国あるいは第三国の特定の使用者向けに再輸出される場合、米国からの直接輸出が規制されていれば、再輸出においても同等の規制を受ける。

(注2)技術移転にかかる輸出規制で、輸出管理規則管轄下の技術、ソフトウエアなどを在米外国人に開示する場合(みなし輸出)や、米国から他国(外国A)に合法的に輸出された技術、ソフトウエアなどが、外国Aで第三国(外国B)国籍保有者に開示される場合(みなし再輸出)も、輸出規制の対象となる。

(綿引文彦)

(米国)

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