モルガン・スタンレー、ロシアでの銀行業務から撤退へ

(ロシア、米国)

欧州ロシアCIS課

2019年05月13日

米金融大手モルガン・スタンレーのロシア銀行法人は4月30日、2018年の年次報告を公表。同報告には、モルガン・スタンレーが2018年12月13日にロシアでの銀行業務ライセンスを無効化し、銀行を閉鎖することを決定したと記載されており、さらに、銀行業務以外の事業を新会社に移管し、ライセンスが不要な投資・不動産分野のコンサルティングサービスに従事するなど、ロシアにおける事業を再編するとしている。

銀行業務ライセンスの取消申請は2020年第1四半期(1~3月)に行う予定で、2019年中は銀行業務をこれまでどおり継続するとしている。銀行業務ライセンスに加え、仲介業務や預託証券業務ライセンスも取り下げる予定。報道によると、モルガン・スタンレーは約40人の従業員を解雇するもよう(「コメルサント」紙5月7日)。

米国のシンクタンク、ブルッキングス研究所の上級研究員セルゲイ・アレクサシェンコ氏は、モルガン・スタンレーは利益志向で、収支を非常に気にする会社だとし、「ロンドン統括拠点がロシア市場を担当しているが、モスクワ拠点の収益が投入人員のコストと比較して見合わないと判断し、今後は英国から直接担当することに切り替えたのではないか」と分析する(「コメルサント」紙2018年12月14日)。

ロシアでは最近10年間、外資金融機関の撤退・事業売却・再編が相次いでいる。2010年にはスペインのサンタンデール銀行がリテール部門をロシアの地場銀行に売却、2011年には英バークレイズが商業銀行部門を売却、オランダのラボバンクがロシア中央銀行へ営業許可取消を申請、英HSBCはリテール部門をシティバンクに売却している。2016年にはスイスのクレディ・スイスがプライベートバンキング事業から撤退すると報じられ、2019年2月にはデンマークのダンスケバンクがロシア拠点の閉鎖を発表している。

モルガン・スタンレーはロシアに1994年に駐在員事務所を開設。2005年にロシアで銀行業務を開始し、2008年には無期限での有価証券売買・仲介・預託証券業務ライセンスを取得した。

(齋藤寛)

(ロシア、米国)

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