中国米国商会が白書発表、デジタル分野で開放求める

(中国、米国)

北京発

2019年05月10日

在中国の米国企業の団体である中国米国商会は4月19日、「在中国米国企業2019年版白書」を発刊した。白書で、(1)透明性、予見可能性、公平性の担保、(2)内国民待遇と競争中立的な政策の促進、(3)グローバルな協力と知的財産権の保護を通じたイノベーションの促進、の3点を重点ポイントにしている。

透明性向上、内外無差別、知財保護が重点ポイント

(1)では、透明かつ公正な規制環境によって安定性と予見可能性が担保されることが中国経済の持続的な成長に重要だとしつつ、中国の政策とその運用との間には大きな隔たりがあるとした。具体的建議として、法律法規、標準の起草や審査において外国企業の平等な参加を認めること、法律などの草案の段階で合理的なスケジュールで意見募集期間を設けること、法律などの公布前に国内外のビジネス界の十分な参加を確保すること、などを求めた。

補助金、外資規制、標準などの国際基準への適合を要請

(2)では、内国民待遇の付与が経済全体に便益を与えるとしつつ、全ての企業が公平で競争的な環境で活動できるようにすべきとした。また、中国企業が海外市場で自由に活動できる一方で、外国企業の中国市場へのアクセスにはいまだ制限が多いとして改善を求めた。具体的には、名目上開放されているとする業種でも、許認可制度により参入が阻止、却下されている事例があるとし、外国投資者が中国企業と同等の待遇を受けられるようにすること、中国企業が米国で投資できる分野については米国企業も中国で投資できるようにすること(注1)、外国投資ネガティブリストについて先進国とその内容を一致させること、安全審査(注2)や「安全でかつコントロールできる」技術の要求を限定的な範囲にとどめ、かつそれらを保護主義や産業政策推進のために活用しないことなどを建議した。

(3)では、イノベーションは米中両国の経済に利益をもたらすとした上で、それを促進するためにデジタル分野でも開放を進め、国境を越えた情報の流通を認めるよう求めた。技術的に中立な標準の策定や知的財産の保護なども主張している。具体的には、「サイバーセキュリティー法」におけるデータの越境移転に関する規制の適用範囲を限定すること、知的財産権侵害を阻止する明確で統一された処罰制度を整備すること、「外商投資法」(2020年1月から施行、詳細は2019年3月20日記事参照)に記載された標準制定への外資系企業の参加を確実に実現すること(注3)などを建議した。

(注1)「在中国米国企業2019年版白書」では、中国企業が米国で投資する際には規制を受けない一方、米国企業が中国で投資をするときに規制を受ける分野として、農業、自動車、銀行・資本市場、医療サービスなどを挙げている。

(注2)「外商投資法」第35条で国は、国家安全に影響するかその可能性がある外商投資について安全審査を行うと規定された。

(注3)具体的には、標準制定技術委員会に外資企業の参加を確保すること。

(小宮昇平)

(中国、米国)

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