第1四半期は3,411億元の減税、個人所得税改革などの効果

(中国)

北京発

2019年05月13日

中国の国家税務総局は4月23日、個人所得税改革や増値税率引き下げなどによる2019年第1四半期(1~3月)の減税実績が、3,411億元(約5兆4,576億円、1元=約16円)に達したと発表した。うち、個人所得税改革による減税額は1,686億元で、1人当たり平均の減税額は855元だった。これらの措置により、累計で9,163万人の納税者の個人所得税納付が免除された。

発表によると、減税効果は主に以下3点から構成されている。

  1. 2019年に新たに打ち出された減税政策による効果は722億元となった。うち、小規模・零細企業を対象とした減税額が576億元(民営企業の減税額が493億元で全体の85.6%)、個人所得税の特定項目付加控除による減税額が146億元(減税が最も多かったのは36~50歳、1人当たり平均減税額は348元)だった。
  2. 2018年に打ち出された減税政策の効果〔2019年第1四半期(1~3月)分〕は2,652億元となった。うち、2018年10月1日にスタートした個人所得税の改革第1段による減税額は1,540億元だった。2018年5月1日開始の増値税の税率を17.0%と11.0%からそれぞれ1.0ポイント引き下げる改革による減税額は976億元だった。
  3. 2018年に期限を迎えた後、2019年にも継続された政策による減税額(2019年第1四半期分)は37億元となった。うち、経営的文化事業機関の体制転換に対する優遇政策による減税額は26億元、農産品卸売市場、農業貿易市場の不動産税、都市土地使用税の優遇政策による減税額は2億6,000万元だった。

国家税務総局収入計画計算司の蔡自力司長(減税弁公室常務副主任を兼任)は「大規模減税策が次々と実施されたことにより、税収の増加率は目に見えて鈍化した」と指摘した。2019年第1四半期の全国税務機関・組織の税収額は4兆1,637億元(輸出増値税の還付分を控除済み)に上り、前年同期比6.1%増加したが、増加率は前年同期を11.7ポイント下回った。このうち増値税や個人所得税などの税目で増加率の低下が特に目立った。

また、蔡司長は「4月1日から実施された増値税率の引き下げによる減税実績が5月分の納税申告完了後に算出できる」と強調した。5月1日から実施される社会保険料の負担率の引き下げもこれに加わることから、5月以降もさらなる減税効果が期待されている。

このような一連の減税による経済効果として、政府当局は市場マインドの改善を挙げている。国家統計局の毛盛勇報道官は4月17日の記者会見で、3月のPMI指数や消費者信頼感指数の改善は、2018年第4四半期(10~12月)に政府が打ち出した「6つの安定(雇用、金融、貿易、外資、投資、予期)」のための各種政策の効果が出てきたためとした上で、3月に全国人民代表大会で公表した増値税率引き下げなどの減税・費用削減策などがさらに市場期待を引き上げるとした(注)。また、4月27日に発表された一定規模以上の工業企業の利益総額は3月単月で13.9%増となったが、国家統計局は、増値税率の引き下げが企業利益の伸びを押し上げた要因の1つであると解説している。

(注)国家統計局の趙慶河高級統計師は、3月の製造業PMI指数のうち、生産指数が52.7%(前月比3.2ポイント増)、新規受注指数が51.6%(同1.0ポイント増)とそれぞれ改善したことについて、減税政策などが徐々に効果を表わして需給が回復したことを示すとの認識を示した。

(趙薇、小宮昇平)

(中国)

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