アルジェリア大統領辞任、近隣マグレブ2カ国政府は反応控える

(チュニジア、モロッコ、アルジェリア)

パリ発

2019年04月09日

アルジェリアのアブデラジィズ・ブーテフリカ大統領の辞任(2019年4月4日記事参照)に対し、近隣マグレブ2カ国の政府は冷静な反応を示している。

隣国チュニジアでは2011年1月、市民運動の広がりにより、当時のベン・アリ政権が失脚に追い込まれた。チュニジア国民にとって、アルジェリアの各都市の中心街を埋め尽くす国民運動の波は、当時をほうふつさせ、ソーシャル・ネットワーク上では多くの支持の声が上がった。一方で、首都チュニスのアルジェリア大使館前や中心街でみられたアルジェリア国民運動支持の活動は即刻、警察側に阻止され、街頭運動が拡大することはなかった。アルジェリアで大規模デモが発生した直後の2月25日、カイド・エセブシ大統領は「アルジェリア国民は自国の政府に対する意見を表明する自由がある」と述べる一方で、「各国それぞれの規則があり、私にはどの国に対しても内政に意見を述べる権利はない」と全面的な支持は避けた。このコメントを除いては、チュニジア政府は沈黙を続けている。

チュニジアにとってアルジェリアは貿易、来訪観光客など重要な経済パートナーであると同時に、1,000キロの国境線で接する隣国であり、アルジェリア軍はテロ対策のパートナーとして欠かせない存在だ。2011年のアラブの春で、危機的状況が続いた隣国リビアによるチュニジアへの経済的ダメージを考慮すると、アルジェリアの今後の政局は、チュニジアにとって大きな不安材料といえる。

アルジェリアとの国境が1994年から閉鎖され、微妙な外交関係にあるモロッコでは、目に見える国民の反応は少ない。政治家は沈黙を守り、メディアでは、アルジェリア政局の混乱の可能性を警戒する論調が中心となっている。他方、アルジェリア国内の混乱によるモロッコへの移民の流入、マグレブ地域またサヘル地域におけるテロ対策の弱体化への危惧を強めているとみられる。

(渡辺智子)

(チュニジア、モロッコ、アルジェリア)

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