EUによる鉄鋼製品への関税割当導入にロシアが報復の可能性を示唆

(ロシア、EU)

欧州ロシアCIS課

2019年04月03日

ロシア政府は4月2日、WTOに対し、EUが2月2日に発動した鉄鋼製品への緊急輸入制限(セーフガード)措置に対して報復措置を講じる可能性について通知した。本セーフガード措置は鉄鋼関連26品目分類を対象に、EU域内の輸入が所定の割当枠を超過した場合、25%の関税を適用するもの(2019年2月4日記事参照)。

WTOの発表によると、ロシアはGATT(注)に基づき、今回のEUによる措置によって影響を受ける相当の貿易量に対する譲許・その他義務を停止すると通知した。EUによる措置が実施されてから3年後、もしくは、WTO紛争解決機関がEUによる措置がWTO協定に矛盾しているという決定を出した日付、のうちのどちらか早い日付で停止し、EUがセーフガード措置をやめるまで継続するとしている。

ロシア経済発展省によると、米国が鉄鋼・アルミニウム製品に対する追加関税を賦課した後(2018年3月27日記事参照)、WTO加盟国の数カ国では、米国市場から追い出された製品の自国市場への流入対策に向けた特別保護調査を実施しており、EUに限らず、ユーラシア経済連合(EEU)も調査に着手しているという。その中で、「ロシアによる今回のアクションはWTO手続きにのっとり、貿易制限をかける権利を留保したもので、報復措置の実施を決定したものではない」と述べている。

通商問題に詳しい高等経済学院(BSE)マクシム・メドベトコフ通商政策学部長は、EUが導入した措置は、(鉄鋼製品流入による)損失の補填(ほてん)に向けたものではない(不当な)措置だと指摘した上で、「ロシア政府は、今後、方法と補填額を決定するが、決定前にWTOに通知しなければならないため、今回はそれを行った」と解説している(インターファクス4月2日)。

(注)関税および貿易に関する一般協定の略称。本稿で記載しているGATTは1994年の改正協定。

(齋藤寛)

(ロシア、EU)

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