メキシコ大統領、経済特区を廃止する意向を表明

(メキシコ)

メキシコ発

2019年04月26日

メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領は4月25日、エンリケ・ペニャ・ニエト前政権下で開始された経済特区を廃止する意向を表明した。経済特区は2016年6月に公布された経済特区法に基づき導入されたもので、廃止には法改正が必要になると予想されることから、実際に廃止できるかどうかは不明だ。現在までにミチョアカン州・ゲレロ州の州境、ベラクルス州、チアパス州、オアハカ州、ユカタン州、カンペチェ州、タバスコ州の7カ所が特区に認定されている。

経済特区は、連邦税を減免する投資インセンティブが少ないメキシコにおいて、15年間の法人所得税(ISR)減免が受けられる貴重な地域だ(2017年11月13日記事参照)。また、開発で恩恵を受ける州や市町村も企業誘致に協力するため、州政府や市町村の租税公課も減免される(2018年4月24日記事参照)。南東部の低開発地域の開発を促進する目的で、AMLO現政権の方向性とも一致しているが、AMLO氏は「資金を浪費しているだけで、何の助けにもなっていない」とし、現政権下で廃止が決まった観光振興評議会や貿易投資誘致機関のプロメヒコと同様、カネを垂れ流すだけの「底なしのたる」だと酷評した(大統領府4月25日の記者会見録)。

経済特区には既に11社が270億ドルの投資を約束

AMLO氏の前政権の業績に対する見方は一方的だ、とする批判は強い。前政権下で日本企業の対メキシコ投資は活性化し、2012年末に683社だった日系企業数は、2018年末に1,193社まで拡大した(経済省データ)。この期間の日本企業の誘致において、アーロン・ベラ商務参事官(当時)を中心とした、プロメヒコ東京事務所の業績を評価するメキシコ関係者は多い。

経済特区についても、正確な情報を基に判断がされていないと指摘する声は多い。前政権下で連邦経済特区開発庁(AFDZEE)の長官を務めたヘラルド・グティエレス・カンディアーニ氏によると、2018年末時点で既に11社が法規の定める全要件を満たしており、数社については連邦政府の許可が下りれば投資計画が開始される段階だったという。これら11社の投資約束額合計は270億ドルに達する。そのほかに趣意書を提出した企業の投資を合計すると86億ドル、それらを基にした今後20年間の想定投資誘致額は450億ドルに達するという(「エクスパンシオン」誌電子版4月25日)。経済特区の廃止によってこれらの投資機会が失われるほか、既に連邦政府や州政府が工業団地開発用地取得などに投じた予算が無駄になる。

(中畑貴雄)

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