メイ首相、ブレグジット合意案可決後の辞任で党内支持確保、議会は代替案否決

(英国、EU)

ロンドン発

2019年03月28日

テレーザ・メイ首相は3月27日、英国のEU離脱(ブレグジット)をめぐり、与党・保守党の一般下院議員の会合に参加し、EUとのブレグジット合意案が英国議会で可決され、円滑な離脱実現が決まれば、離脱後の移行期間に行われる英国・EUの将来関係に関する交渉は新たな指導者の下で行うと明言した。自らの辞任と引き換えに合意案への支持を訴えたものだ。辞任の日取りには触れていないが、狙いどおり合意案が可決されれば、遅くとも新たな離脱日となる5月22日からほどなくして保守党の党首選を始め、数週間後の新党首決定を受けて、7月上旬にも首相の座を降りることになる。

最後のカードを切ったメイ首相に対し、これまで抵抗してきた保守党内のEU離脱強硬派(2019年3月27日記事参照)も次々と合意案支持に転向。BBCの政治担当記者のツイートによると、支持に転じた強硬派の1人は、最後まで反対する強硬派は15人程度と予想している。

しかし、強硬派とともにカギを握る北アイルランドの民主統一党(DUP)は同日夜、なお政府の合意案を支持しないとする声明を発表。BBCによると、DUPが合意案を支持するなら自分も支持に転じると明言していた強硬派の代表格ジェイコブ・リースモグ議員は、同党が採決を棄権した場合でも支持に回るとコメントしていたが、DUPのナイジェル・ドッズ副党首はツイートで棄権はしないと断言。メイ首相が切り札を行使してもなお、議会通過は見通せていない。

メイ首相には、3月12日に否決された合意案と実質的に変わらなければ、3度目の採決は認めないとした(2019年3月19日記事参照)ジョン・バーコウ下院議長の壁も立ちはだかる。議長は3月27日の議会であらためてこれに言及。欧州理事会がブレグジットの付属文書を正式に承認し、離脱日も変わった(2019年3月22日記事参照)ことで、政府は実質的な変化があったと主張し、ぎりぎりの3月29日にも3度目の採決に持ち込む構えだが、実現するかは不透明だ。

3度目の採決をめぐる一連の動きに並行して、議会主導による代替案の採決も行われた。議員提出の16の代替案からバーコウ議長が8つに絞ったが、いずれも過半数の支持を得られず(添付資料参照)、合意形成がいかに困難かを示す結果となった。これを受け、スチーブン・バークレーEU離脱担当相は議会で声明を発表し、政府の合意案の正当性をあらためて主張。3度目の採決で支持するよう強い口調で訴えた。ただ、代替案の審議は4月1日も続けられる見込みで、3月27日に僅差で否決されたEUの関税同盟残留や2度目の国民投票実施などが支持を集める可能性も消えていない。政府の合意案か代替案か、政府と議会の最後の攻防が続く。

(宮崎拓)

(英国、EU)

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