業種別の最低賃金の導入を検討

(マレーシア)

クアラルンプール発

2019年03月12日

M・クラセガラン人的資源相は2月25日、最低賃金を賃金実態に合わせて業種別に設定することを検討している、と発言した。マレーシアの最低賃金(月額)は、2019年1月1日から全国一律1,100リンギ(約2万9,700円、1リンギ=約27円)に改定された。今回の引き上げにより、会社閉鎖や従業員解雇を余儀なくされたとする企業からの声が背景にあるという。

業種別最低賃金に対し、各方面から懸念の声

同相は3月3日、本件について再度言及し、業種別の最低賃金の検討には「少なくとも2年は必要だ」とコメントした(「マレーメール」紙3月3日)。最低賃金の見直しは2年に1回の頻度で行うと規定されており、次回の見直し時に検討されるとみられる。

マレーシア労働組合会議(MTUC)は「同じ業種でも企業ごとに利益率に大きな差があり、業種別の最低賃金設定は良策とはいえない」と反対を表明している。他方、チャールズ・サンチャゴ国会議員は、地域によって生活コストの差があることを勘案し、業種別よりも地域別の最低賃金が合理的だと述べた(「フリー・マレーシア・トゥデイ」紙2月28日)。

日系企業からも、今後の見通しに懸念の声が挙がる。日系製造業A社は、マレーシア人が現場作業を敬遠する傾向にあり採用が難しくなっていることを背景に、「業種別の最低賃金は採用難に拍車を掛ける恐れもある」と指摘する。

今後の動きに注視が必要

マレーシアでは、2013年1月1日から最低賃金制度が導入され、当初はマレー半島部と東マレーシアとで、それぞれ地域ごとに設定され、2016年7月1日に最初の改定が行われた(表参照)。また、最低賃金の全国統一化は、2018年5月に誕生したマハティール政権の公約に掲げられており、それが実行されたかたちとなる。公約によると、政権の任期満了となる5年以内に、1,500リンギまで引き上げるとしている。今後の最低賃金改定に加え、業種別の検討がされるかどうか、注視が必要だ。

表 マレーシアの最低賃金

(田中麻理)

(マレーシア)

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