ソムキット副首相、現政権の5年間の実績をアピール

(タイ)

企画部海外地域戦略班

2019年03月06日

ソムキット副首相は3月4日、タイ投資委員会(BOI)主催のシンポジウム「タイランド・インベストメントイヤーの今」(2019年3月5日記事参照)で、「タイランド・インベストメントイヤー:課題(Challenges)を機会(Opportunities)に変える」と題した講演を行い、現在、タイが迎える4つの「機会」を紹介した。

1つ目が、「強固なマクロ経済のファンダメンタルズ」だ。ソムキット副首相は「着任後の2015年には、GDP成長率が1%未満という水準まで弱体化していたタイ経済が、2018年には4.1%まで回復した。また、2,000億ドルを超える外貨準備高、GDPの7%に相当する経常収支黒字、(GDP比)45%を下回る公的債務などの指標は、マクロ経済のファンダメンタルズが強固であることの証しだ」とし、現政権による経済改革の成果を強調した。

投資誘致の面では、2018年に、タイ政府が開発を推進する東部経済回廊(EEC)域内に、前年の2倍以上の投資が流入したことや、過去2年の間に日本、中国からそれぞれ500人、600人のビジネスミッションがEECを訪問したこと、さらに日中両国による第三国での共同投資プロジェクトの中で、EEC地域が有望なターゲットに指定されていることなどを紹介した。

2つ目は、「中国との連結性強化」だ。前週、林鄭月娥(キャリー・ラム)香港特別行政区行政長官がタイを訪れ、香港経済貿易代表部(ETO)のバンコク事務所の開設を決定したことを報告した。ETOバンコク事務所の開所に伴い、香港から広東、マカオをカバーするグレートベイエリア(GBA:Greater Bay Area)とASEANの連結性が、タイをゲートウエーとして一層強化されることを強調した。「一帯一路」政策による中国のASEANへの南下の動きと併せ、今後、多くの中国企業が、タイから周辺のCLMV(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)を含めた経済圏向けの投資を拡大することになる」との期待を示した。

3つ目は、タイが2019年の「ASEAN議長国」という点だ。タイでの首脳会議開催、東アジア地域包括的経済連携協定(RCEP)妥結への期待、一帯一路構想のASEANへの南下、さらには選挙(3月24日の予定)後に環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)に正式加盟を予定していることを表明した。さらに、タイがASEANのハブとして、多くの経済大国と連結する役割を担うとし、「米中の貿易戦争に先行きが見えない中、アジアのサプライチェーンのハブとして、タイが中国を代替する役割を果たすことも期待されている。投資先としてのタイの魅力はますます高まるだろう」と述べた。

4点目として、「5月に現国王、ラマ10世の戴冠式が行われること」を挙げ、戴冠式は「タイの社会経済と政治の強さや安定を証明する絶好の機会になる」とした。

最後に、3月24日に予定されている総選挙について、「プラユット首相の強力なリーダーシップによってもたらされた5年間の政治的安定、経済発展を今後も継続できるか、が焦点になる。現政権がタイにもたらしたメリットを見直してほしい。同首相ならば、継続できる」とあらためて強調した。

(伊藤博敏)

(タイ)

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