消費者信頼感は急上昇も、エコノミストの見方は冷ややか

(メキシコ)

メキシコ発

2019年02月15日

国立統計地理情報院(INEGI)の2月6日の発表によると、1月の消費者信頼感指数(ICC、季節調整済み)は前月比5.4ポイント増の111.99(2003年と100とする)となり、2カ月連続で5ポイント超増加した。リーマン・ショック後に急落したICCが100に戻ったのは2018年7月の大統領選挙後だ。12月のアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)氏の大統領就任を機に再び急上昇し、低迷していた耐久消費財購入意欲(ICCの構成要素の1つ)も100を超えた(添付資料図1参照)。

標本数が410人と少ないものの、「エル・フィナンシエロ」紙が1月31日~2月1日に実施した世論調査によると、大統領の支持率は86%に達しており、新政権への期待がICCに反映されているとみられる。ウォルマートの2月7日付発表によると、メキシコにおける1月の同社販売額は前年同月比5.6%増と同社想定以上だった。

法の支配の欠如を懸念する声も

他方、経済の先行きに対するエコノミストの見方は冷ややかだ。中央銀行が毎月30超の国内外シンクタンクに対して実施しているアンケート調査によると、2019年の経済成長率見通しは1月時点(2月1日発表)で1.80%と4カ月連続で低下した(添付資料図2参照)。

「国内政治の情勢不安」が経済阻害要因として挙げられており、AMLO氏の大統領就任直後よりは落ち着いたものの、依然として最大の懸念要因だ。2018年3月時点は「通商政策の行方(NAFTAなど)」が最大の懸念要因(25.7%)だったが、2019年1月には4.2%に低下した(添付資料表参照)。2018年10月以降、上昇傾向が目立つのが「法の支配の欠如」で、10月末のメキシコ市新国際空港の建設中止(2018年11月1日記事参照)が大きな契機となった。同要因の1月の上昇の背景は、選挙期間中にAMLO氏を支持した過激派教員組合(CNTE)が1月半ばから1カ月弱にわたり、ミチョアカン州政府に未払い給与などの支払いを求めた鉄道路線封鎖にある。国内経済活動に甚大な被害を招いたが、鉄道路線の管理責任がある連邦政府は両者の対話での解決を主張し、封鎖排除に一切実力を行使しなかったためだ。企業家調整評議会(CCE)によると、鉄道閉鎖による民間部門の被害額は250億ペソ(約1,450億円、1ペソ=約5.8円)に及ぶという(2月8日付主要各紙)。

(中畑貴雄)

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