PEMEXの財政救済策を発表、エコノミストは不十分と指摘

(メキシコ)

メキシコ発

2019年02月21日

政府は2月15日、多額の債務を抱えるメキシコ石油公社(PEMEX)の財政救済策を発表した。総額1,070億ペソ(約6,206億円、1ペソ=約5.8円)に及ぶ救済策により、2019年のPEMEXの投資額を前年比36%増の2,881億ペソまで増加させ、低迷する石油生産量と確認埋蔵量の回復を目指す。

大蔵公債省の発表(2月15日付)によると、連邦政府の救済策は4種類から成り、資本増強が250億ペソ、約束手形の現金化が350億ペソ、費用控除の拡大による税負担軽減が150億ペソ、燃料盗難対策による増収が320億ペソで、合計1,070億ペソ。税負担の軽減幅は毎年150億ペソずつ増加し、2024年には900億ペソまで拡大する。PEMEXの債務は過去6年で平均1,407億ペソ増加してきたが、今回の救済策により、2019年には新規借り入れを行う必要はなくなる(既存債務の再編は行う)。連邦政府は、救済策の原資を徴税効率化による税収増で賄うと説明している。

格付け会社や大手銀行は不十分との評価

格付け会社フィッチ・レーティングスは、1月29日にPEMEXの発行体デフォルト格付け(IDR)をそれまでの「BBB+」から「BBB-」に格下げしていたが、今回の発表を受け、救済策の内容は年初から想定されていたもので、1月末の格下げ時点で織り込み済みだったとし、PEMEXの一時的なキャッシュフロー負担の軽減にはなるが、同社の原油生産と確認埋蔵量の増加をもたらすためには不十分だとコメントした。原油生産と埋蔵量の水準回復には年間120億~170億ドル(2,310億~3,270億ペソ)の資金が必要で、今回発表された金額はそれよりも明らかに少ないと指摘する(「エル・フィナンシエロ」紙2月15日)。

大手商業銀行のBBVAバンコメールやシティバナメックスのエコノミストも、今回の救済策は一時しのぎにすぎず、PEMEXが抱える債務超過と生産量減退の構造的問題を解決するには不十分、との見解を示している。BBVAバンコメールは、原油生産を安定させるためには2019年度のPEMEX投資予算(2,730億ペソ)を倍増させた上で、探査・生産部門に集中させる必要があり、PEMEXの債務を増やさないためには国庫の負担が増え、国債の格付けにも影響するとしている(主要各紙2月16日)。また、政府はPEMEXの税負担軽減の原資を徴税効率化で賄うとしているが、毎年150億ペソに及ぶ効率化が持続可能なのか、と疑問視する向きも多い。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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