二輪スクーターの救急治療部隊が躍動

(ベトナム)

ホーチミン発

2019年02月26日

ホーチミン市では、慢性的な交通渋滞や四輪車が通行できない細い路地などで、救急車が迅速に到着できず、初期治療が遅れることで救えない命があるといわれている。こうした状況を受け、2018年11月からホーチミン・サイゴン病院で、四輪車よりも迅速に現場に到着できる「救急スクーター」を活用して、1人でも多くの命を救おうという試みが始まった。試験運用期間は6カ月間で、当局から認可されれば、ベトナムで初めての取り組みとなる。試験運用開始後の状況を、同病院副院長のグエン・カック・ブイ医師に取材した(2019年2月22日)。

同病院が保有する救急スクーターは2台で、使用するスクーターはホンダ製だ。現在は認可前なので、救急サイレンや赤色灯は搭載しておらず、市販のスクーターをそのまま使用している。運用開始後の3カ月間で、全救急出動285件のうち救急スクーターの出動は88件と、約3割を占める。同医師によると、試験運用結果は良好とのことだ。

運用方法は、患者から病気やけがの状況、住所をヒアリングし、四輪救急車にするか、救急スクーターにするかを医師が判断。一刻を争う状態であれば、四輪、スクーターともに出動し、スクーター部隊が初期治療を行った後に、四輪救急車が病院まで搬送する。救急スクーターには、医師1人と看護師1人の2人が同乗し、医薬品や自動体外式除細動器(AED)などの医療設備を搭載し、現場へ向かう。

同医師は、救急スクーター導入の背景として、前述した交通渋滞や道路事情に加え、ベトナムでは患者が病院に行けない場合に医師を自家用スクーターで迎えに行き、自宅まで連れてくる慣習が元々あり、小回りの利く救急スクーターに対する市民からのニーズが一定程度見込めた点を挙げる。

人命を救うためにはさまざまな取り組みが必要だが、同医師は「救命可能な時間は限られており、いかに早く初期治療できるかが人命を救うために重要だ」と話す。

写真 ホーチミン市中心街で、渋滞により動かない救急車(ジェトロ撮影)

ホーチミン市中心街で、渋滞により動かない救急車(ジェトロ撮影)

写真 試験導入された救急スクーター(ジェトロ撮影)

試験導入された救急スクーター(ジェトロ撮影)

(山下大輔、ダン・ティ・ゴック・スオン)

(ベトナム)

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