外国投資者の自由な海外送金などを保障

(中国)

北京発

2019年01月31日

ジェトロは1月28日、北京市で「『外商投資法(草案)』の注目すべきポイント~施行40年来の外商投資管理体制の変革~」をテーマにセミナーを開催した。北京市大地法律事務所の熊琳パートナー弁護士が、2月24日まで意見募集中の「外商投資法(草案)」の概要、注目すべきポイント、日系企業にとっての留意点と対応策について解説した。2回に分けて報告する。

原則的な内容に

現行の外資系企業の投資には、企業の出資形態に応じて中外合弁経営企業法、中外合作経営企業法、外資企業法(以下、外資3法)のいずれかが適用される。最も施行が早かった中外合弁経営企業法は1979年の施行から40年経ち、外資3法のいずれも改訂を重ねているものの、現状に合わない部分も出てきた。2006年に改正・施行された会社法が部分的に適用されるなど、混乱が生じている。2015年1月には、外資3法廃止の内容を含む「外国投資法(草案)」が発表されたが、施行には至らなかった。

現在意見募集中の「外商投資法(草案)」と2015年に発表された「外国投資法(草案)」を比べると、まず、法律の名称が異なる。「外国投資」が「外商投資」となり、ビジネス分野に限定された。次に、条文数が170条から39条になり、条文数が前者の23%にまで減った。中身は濃くなっているものの、国家安全審査制度や情報報告制度などは、詳細な規定から原則的な規定に変わったことから、実施細則に詳細が盛り込まれることが見込まれる。また、外商投資参入ネガティブリスト制度や外商投資に対する届出制の導入など、既に実現した内容も記載が簡素化されている。

公平性確保も具体的な手続きは不明確

「外商投資法(草案)」の注目すべきポイントを条文ごとにみていく。

第2条では、外商投資の主体と投資活動を定義しているが、主体に外国の政府機関や非政府組織が含まれるか、明確になっていない。投資活動については、定義に含まれる状況が列挙されているが、外資系企業の中国国内における再投資が含まれるか触れられていない。

第10条では、外商投資に関連する法令を制定する際、外資系企業の意見や建議を聴取しなければならないこと、外商投資に関連する法令や司法判決は、遅滞なく公開しなければならないことと規定されている。第15条では、標準化業務に外資系企業も等しく参与するものと規定されている。第16条では、外商投資企業の政府調達活動への公平な参与を保障している。こうした公平性の確保や法令・政策制定時の透明性の向上は、日系企業が中国政府に要請してきたもので喜ばしいことではあるが、具体的な建議の提出ルートや方法は明確になっていない。

第21条では、中国国内で発生した外国投資者の出資、利益、資本収益、知的財産権の使用料などは、法に基づき人民元または外貨により自由に海外送金することができると規定されている。しかし、現在、地方政府が実務上採用している「年間限度額」などの措置が引き続き適用されるのか、政治やマクロ経済の状況により発動される一時的な外貨管理規制措置が今後も外資系企業にも適用されるのか、「外商投資法」の規定に合わない実務上の規制がどうなるのか、留意が必要だ。

(日向裕弥)

(中国)

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