TPP11が発効、原産地規則の緩和効果も

(メキシコ)

メキシコ発

2019年01月04日

環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)が、2018年12月30日に発効した。TPP11発効により、豚肉、牛肉、クロマグロ、オレンジ果汁、アガベシロップなど、メキシコの主要輸出農産品の対日市場アクセスが改善されるとともに、みそ、スナック菓子、麺類、和牛、緑茶などのメキシコの関税も削減・撤廃されるため、農水産・食品分野の貿易が双方向で拡大するとみられている(2018年6月22日付地域・分析レポート参照)。

関税削減以外の分野で、効果が見込まれるのが原産地規則の緩和だ。特に、一般関税率が15%の棒鋼など(2018年6月7日記事参照)は、日本からメキシコへの輸出において、大きな効果がある。

2005年4月1日に発効した、日本メキシコ経済連携協定(日墨EPA)の鋼材(HS72類)の原産地規則は国際的にみても厳格で、大半の品目で2桁レベルの関税分類変更(CC)でないと原産品と見なされない。鋼板など高炉で生産される鋼材の場合は、原料である鉄鉱石(26.01)がブラジルなど域外産であっても、HSコードが完成品の鋼材(HS72類)と上2桁で異なるため、日本で生産すれば原産品となる。他方、棒鋼や線材など電気炉で生産される鋼材は、原料が鉄スクラップ(72.04)で、HSコードが製品と同じ72類に分類されるため、スクラップの原産性が確認できないと原産品と判定できない。他方、TPP11の原産地規則では、4桁レベルの関税分類変更(CTH)で原産品となるため、スクラップ(72.04)と完成品の棒鋼(72.13~72.15、72.27~72.28)は上4桁で異なり、前者の原産性が確認できなくても、日本で生産すれば原産品となる。

家具などの原産地規則も緩和

そのほか、医療用ベッドや理髪・歯科用の椅子(94.02)について、日墨EPAの原産地規則ではCCが求められるため、同じHS94類に分類される部品からの組み立てでは原産品とならない。他方、TPP11ではCTHだけでなく、付加価値基準〔30~50%、計算公式により閾値(いきち)が異なる〕の選択肢があるため、域内で一定の付加価値を付ければ、たとえ同じHS4桁(94.02)に分類される専用部品を用いても原産品となる。原産地規則が厳格なために、今まで日墨EPAの特恵関税が適用できなかった企業は、TPP11の活用を検討すべきだろう。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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