2018年度日系企業調査、ブレグジットによる最大の懸念は「英国経済の不振」

(欧州、英国)

欧州ロシアCIS課

2018年12月13日

ジェトロが12月11日発表した「2018年度欧州進出日系企業実態調査」(有効回答763社、9月27日~10月25日に調査実施)によると、在欧州日系企業が抱く、英国のEU離脱(ブレグジット)への最大の懸念(複数回答)は「英国経済の不振」だった。在英日系企業だけでみると、71.3%が懸念事項と回答した。

アイルランドで特に影響大

「ブレグジットのこれまでの事業への影響」で、「マイナスの影響がある」と回答した企業は欧州全体では16.1%で、前年の調査から2.0ポイント上昇した(添付資料参照)。国別にみると、特に在アイルランド日系企業の38.1%が「マイナスの影響がある」と回答、前年調査より、25.1ポイントも上昇した。在アイルランド日系企業の英国からの平均調達率が15.3%と特に高く、英国・アイルランド間で一定のサプライチェーンが構築されていることが背景にあるとみられる。

「ブレグジットによる今後の事業への影響」では、欧州全体では「マイナスの影響」が前年調査より12.0ポイント増の38.9%へ大きく増加し、懸念が強まっている。国別にみると、「マイナスの影響」は前年調査から12.9ポイント増の英国が59.8%で最も高かった。

ブレグジットに伴う英国の規制・法制の変更に関する具体的な懸念としては、欧州全体で「EU規則との一貫性」(77.3%)が最大となった。在英日系企業に絞ってみると、「変更対応の社内体制」(77.1%)の割合が「EU規則との一貫性」(74.3%)を上回った。懸念分野では「関税」(86.4%)が最上位で、「非関税障壁」と「個人データ保護規則」(ともに41.2%)、「基準・認証」(30.6%)を懸念する企業の割合も高かった。

英国のEU離脱に備え、欧州拠点の機能を移転または撤退などを実施、あるいは決定したと回答した企業に、具体的な機能について聞いたところ、「統括」(61.0%)が最大で、「販売」(29.3%)、「生産」(14.6%)」が続いた。移転先として、「統括」では金融/保険を中心にドイツ(8社)、ルクセンブルク(7社)、オランダ(4社)、「販売」ではドイツ(4社)、「生産」ではポーランド、オランダ、フィリピンが挙がった。

「合意なき離脱」に至った場合の対応策(コンティンジェンシー・プラン)の策定状況では、「策定済み」「策定中」の回答割合は在英日系企業と、在英を除く在EU日系企業との間で大きな差はないが、「策定予定」を合わせると、在英日系企業は26.8%となり、在英を除く在EU日系企業の12.8%を大きく上回った。「策定済み」「策定中」と回答した企業の対応策として、最も多く挙げられたのが物流・税関の混乱などを想定した「在庫の確保・積み増し」(20社)だった。

(福井崇泰、田中晋)

(欧州、英国)

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