共和党知事再選のアリゾナ州、ハイテク企業誘致に期待

(米国)

ロサンゼルス発

2018年11月13日

11月6日の中間選挙で行われた州知事選挙の結果、アリゾナ州では共和党のダグ・デュシー知事が、民主党候補のデビッド・ガルシア氏を破って再選を果たした。伝統的に共和党有利とされる同州だが、4月に起きた公立学校教員によるストライキなどを背景に、一時はデュシー知事の苦戦を予想する声が聞かれた(2018年9月10日記事参照)。だが、ふたを開けてみれば、ガルシア氏を得票率で15ポイント超引き離した。同日の同州議会選挙では、上下両院で共和党が多数党を維持し、デュシー氏が進める政策の支援体制を固めた。

元ビジネスパーソンのデュシー知事の公約は「小さな州政府」の実現、雇用創出、オバマケアの廃止、国境の壁建設および警備強化、不法移民取り締まり強化などで、トランプ政権の政策とほぼ一致している。1期目に学校教員のストライキ発生で自身が非難の的となり、知事選の焦点ともなった教育分野にも力を入れていく意向だ。

経済政策では投資、減税、税制の簡素化や規制緩和などへの取り組みを表明しており、デュシー知事の再選は企業にとって朗報といえる。同氏の投資誘致に向けた取り組みは既に1期目に証明済みだ。もともと、防衛産業と関係性の強い電機・電子産業の素地があり、航空産業、自動車、ITなど多くの世界的企業が拠点を設立しているアリゾナ州は、州政府による規制緩和や地元商工会との協力を通じて、新技術の開発に優れた環境を提供している(2018年5月29日付地域・分析レポート参照)。2015年に全米で初めて許可された自動車の自動運転実験は、2018年3月にウーバーが起こした死亡事故でつまずいたが、10月には州知事令により、州政府機関、州立大学、民間企業の協力で、自動運転における人々の安全確保の方策を検討する自動運転研究所の設立を目指すことになった。また、2018年3月には全米初のフィンテック実証実験を可能とする州法が成立し、金融業界から注目を集めている(2018年10月30日記事参照)。

「小さな州政府」を目指すデュシー氏だが、州経済や高成長に伴う人口流入への対応で重要となるインフラ整備も主要課題の1つとしている。砂漠地帯が広がる同州で必要となる水道システムの充実のほか、道路、橋、空港など交通インフラの整備も重視している。他方、2018年9月には、2030年までに州の電力の半分を再生可能エネルギー発電とする内容のプロポジション127に対して、「電力料金は支払い可能なレベルでなければならない」とし、不履行の企業に対する罰金を相当程度引き下げる内容の法律に署名するなど、再生可能エネルギーの推進には消極的(企業寄り)な姿勢を示している。

(北條隆)

(米国)

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