郡レベルでもビジネス環境向上に向け、ランキング制度を導入

(インド)

ニューデリー発

2018年11月29日

インド商工省は11月19日、モディ首相や財界人、投資促進機関が参加したイベントで、ビジネスのしやすさをランク付けする制度を「郡レベル」でも新たに導入することを発表した。インドは既に国レベルの取り組みに加え、州間の競争を促す州別ランキングを導入(2018年10月30日記事参照)している。

インドは、世界銀行が10月31日に発表した各国のビジネス環境ランキング「ビジネス環境の現状2019年版(Doing Business 2019)」で77位に位置付けられ、モディ政権が発足した2014年に発表された2015年版の142位から65ランクの大幅アップを記録した。(2018年11月9日記事参照)。これを受け、モディ首相が投資家に向けてその成果と今後の取り組みを直接伝える意図から、このイベントが開催された。モディ首相のほか、アルン・ジャイトレー財務相、スレシュ・プラブー商工相、約100人の財界人や投資促進機関、マスコミが参加した。

商工省産業政策促進局(DIPP)のラメシュ・アビシェク次官は、「州別ランキングの導入によって、ビジネス環境の改善政策を取り入れた州は29州中17州に及ぶ。特に工場立地手続きのシングルウインドー化や公共サービス手続きのオンライン化が進んだ」とした。新たに開始される郡レベルでの評価については、「ITなどの先進技術がプロセスの改善に大きく寄与する。スタートアップのイノベーションなども取り込みながら、より大規模な改革を果たしていきたい」と語った。

モディ首相は、2014年の政権発足当初の目標としてきた世界ランキング50位が現実味を帯びてきたとした上で、「郡ベースのランキングの評価指標の1つとして、1人当たりGDPを採用する。これは所得向上も促すことになる」とし、「国民が暮らしの向上を感じられるかが重要だ」と述べた。

モディ首相はさらに、世界銀行の「Doing Business」の範囲(注)を超える取り組みとして、行政の透明性向上、物品・サービス税(GST)導入、破産・倒産法の導入、高額紙幣の刷新など、これまで実施した改革について触れ、起業手続きにかかる時間が4年前の280時間から144時間に短縮、GST導入により物流効率性が15%向上、50以上あった工場建設手続きを5つに集約、8~10カ月を要した税の還付が数週間に短縮、といった成果の具体例を示した。

一方、財界人はイベントで、環境改善を評価しながらも、今後の課題として商法・契約法などにおける手続き、土地収用プロセス、エネルギー供給などの改善を求めた。

(注)世界銀行ランキングは、10のビジネスプロセスの分野における時間、コストを中心に評価している。

(古屋礼子)

(インド)

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