第3四半期のGDP成長率は前期比0.6%と7期ぶりの高水準

(英国)

ロンドン発

2018年11月21日

国民統計局(ONS)の11月9日の発表によると、2018年第3四半期(7~9月)の英国の実質GDP成長率(速報値)は前期比0.6%となった。EU離脱(ブレグジット)交渉をめぐる不透明感が増す中、2016年第4四半期以来7四半期ぶりの高水準を記録した(図参照)。前年同期比でも1.5%と直近4四半期で最も高い伸び率を示した。

図 英国の四半期別GDP成長率の推移

ONSは前期比で高い成長を記録した背景について、好天に恵まれたこと、イングランド代表が18年ぶりに4強入りした2018 FIFAワールドカップが開催された7月に小売り部門(流通・ホテル・レストラン)が好調だったことを挙げている。同部門の7月のGDPは前月比0.3%増で、8、9月は横ばいだった。

建設業は、第1四半期は悪天候などにより前期比1.6%減と大きく落ち込んだが、0.8%増だった第2四半期に続き2.1%増となった。第2四半期に0.7%減と落ち込んだ製造業も0.6%増に転じた。運輸・倉庫・通信も前期の1.5%増とほぼ同じ1.4%増と堅調だった。

GDPを前年同期比でみると、運輸・倉庫・通信(4.1%増)、流通・ホテル・レストラン(2.8%増)、建設業(2.0%増)などが堅調な伸びを示した(表参照)。しかし流通・ホテル・レストランを除く2業種やGDPに占める割合が大きいビジネスサービス・金融などはいずれも2017年通年の水準に比べ力強さに欠ける。農林水産業は3四半期連続のマイナスだった。

表 英国の実質GDP成長率(前年同期比)

EU離脱の見通しが不透明感を増しており、移行期間を伴わない「ノー・ディール」の懸念が拭えないことから、雇用や賃金は好転しているにもかかわらず、当面は経済の急進は望めない状況だ。ドイツ調査会社GfKが欧州委員会から委託を受け毎月調査、発表している消費者信頼感指数は、10月は前月より1ポイント悪化してマイナス10ポイントとなり、3カ月連続で下落した。

なお、欧州委が11月8日に発表した秋季経済予測では、2018年の英国の実質GDP成長率見通しは1.3%で、5月の春季予測の1.5%から引き下げた7月の夏季予測と変わらなかった(2018年11月9日記事参照)。

(宮崎拓)

(英国)

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