カリフォルニア州でネットニュートラリティー法成立

(米国)

サンフランシスコ発

2018年10月09日

カリフォルニア州のジェリー・ブラウン知事は9月30日、インターネットの中立性(ネットニュートラリティー)を維持する法案(SB-822)に署名、同法が成立した。

オバマ政権下の2015年3月、連邦通信委員会(FCC)は、インターネットプロバイダー(ISP)を「情報サービス」ではなく固定電話や電気のような「公益事業」と再定義し、ISPが特定のコンテンツを優遇することなどを禁止するオープンインターネット規則を発表した。しかし、トランプ政権下の2017年12月、FCCが同規則を廃止したことを受け、カリフォルニア州議会のスコット・ウィーナー上院議員らが同州独自の法案「インターネット消費者保護・ネットニュートラリティー2018」(SB-822)を作成した。

SB-822は、ISPが特定のウェブサイトやサービスの通信速度を遅くする、あるいは特定のウェブサイトへのアクセスをブロックすることなどを禁止する。

SB-822の内容で、特に低所得層のインターネット利用者の保護に関係すると言われるのが「ゼロレーティング」の不正使用の禁止だ。ゼロレーティングは、ISPが利用者に対し特定のコンテンツのデータ受信を無料にし、スマホなどで月ごとに定められたデータ通信量を消費しないで済むというもの。ISPが恣意(しい)的に自社の関連会社など特定のコンテンツのみをゼロレーティングで提供できるようにし、それ以外のコンテンツと差別的扱いが生じる結果、競争が阻害されるとともに、利用者へ提供されるコンテンツに偏りが生じ得る。ピュー・リサーチ・センターの調査(2018年2月)によれば、米国では成人の5人に1人が家庭でブロードバンドインターネットを利用せずスマホのみを利用するユーザーで、低所得層ほどその割合が高いことが分かっている。

SB-822の施行は2019年1月1日の予定だが、米司法省はブラウン知事の署名後、9月30日付で、同法成立を覆すためカリフォルニア州を提訴しており、裁判の結果が待たれる。

(田中三保子)

(米国)

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