2019~2021年の「新経済プログラム」発表

(トルコ)

イスタンブール発

2018年10月03日

トルコ政府は9月20日、2019~2021年の「新経済プログラム(旧中期経済計画)」を発表した。ベラト・アルバイラク国庫・財務相は、政府の経済管理能力が市場の信認を回復させると強調し、内需の収縮を受け入れ、成長目標を現実的に下方修正し、公的支出を100億トルコ・リラ(約1,800億円、1リラ=約18円)近く削減する計画を明らかにした(添付資料参照)。

アルバイラク国庫・財務相は、2019年から2021年を経済のバランス、規律、変革の時期と位置付け、以下の項目を優先するとした。

  1. 成長目標を現実的、継続的なものに調整し、製造業と輸出の高付加価値化に注力。
  2. インフレ抑制に関しては中央銀行の独立性を再度強調し、国庫・財務省も財政規律を維持することによって物価安定を支援する。「金融安定・開発委員会(FIKKO)」を設置、包括的なインフレ抑制プログラムを実施する。
  3. 財政規律に関しては、財源の制約に鑑み、新規インフラ開発を事実上凍結する。巨大インフラ事業は国際的な資金調達により実施する。官民パートナーシップ(PPP)を活用し、社会保障制度、税制の見直し、効率化を図る。
  4. 経常収支の改善に向け、輸入依存度の高い医薬品、エネルギー、石油化学、機械機器、ソフトウエアなどの分野への投資環境を整備する。テクノロジー、研究開発(R&D)に対しPPPスキームを活用する。輸出産業へのインセンティブの見直し、新市場と新製品を開拓する。再生可能エネルギー、国産石炭燃料分野の投資比率を高め、エネルギー技術の内製化を図るとともに、石油・天然ガスの採掘を促進する。
  5. 雇用促進のため、退職金改革や、公的部門でのフレキシブルな雇用を実施するとともに、雇用インセンティブの見直しと改善、未登録雇用の削減に向けた取り組みを強化する。さらに、民間と協力した職業訓練プログラムを実施する。

エコノミストらは、マクロ経済目標が現実的に再設定されたこと、支出削減の下でプロジェクト偏重姿勢が改められたことを前向きに評価したが、市場の動きは鈍く、外国為替、株価ともに大きく改善することはなかった。その背景には、不良債権を抱える銀行支援への具体的な救済策が示されなかったことが投資家を失望させたことがある。投資家の間では、現下の通貨下落の本質が銀行危機であることが受け入れられなかったと判断され、さらに「金利の敵」を自認するエルドアン大統領の「経済セオリー」への警戒感を薄めることができなかったためとみられている。

なお、2018年の経済成長率目標は、年初の5.5%から3.8%に下方修正されている。

(中島敏博)

(トルコ)

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