中南米セミナー開催、各国の経済動向を報告

(ブラジル、中南米)

サンパウロ発

2018年10月17日

ジェトロはブラジル日本商工会議所と、「中南米ビジネスセミナー」を10月9日にサンパウロ市内で開催した。セミナーでは、ブラジルを除くジェトロの中南米事務所長が最新の経済・ビジネス情勢を報告した。

まずメキシコは近年、米国向け輸出拠点として日本から自動車産業を中心に投資が急増したが、トランプ政権になって新規の進出は若干減少した。2018年9月末の北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉の合意と、そのサイドレターによる乗用車の年間対米輸出台数260万台までの米国通商拡大法232条適用除外により、当面、対米自動車輸出への障壁はごく限定的なものになるとみられる。また、7月の選挙に当選し、12月に大統領に就任するアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)氏は、左派ポピュリストと評されていたが、少なくとも政権移行期間を通じてその傾向が抑えられていること、財政均衡やマクロ経済指標の安定を重視していることから、ビジネス界の不安は軽減されている。

コロンビアは、人口5,000万人弱と南米2位の規模があり、2018年は2.8%のGDP成長率を見込む。石油資源を中心とした鉱業に加えて農業、サービス業が経済を牽引している。8月に就任したイバン・ドゥケ新大統領は法人税減税を検討しており、新たな企業進出を促そうとしている。

ペルーはクチンスキー前大統領の辞任に伴い、2018年3月にマルティン・ビスカラ大統領が就任している。2018年のGDP成長率は4.1%と、中南米の平均予想値(1.2%)を上回る見込みだ。銅など鉱物資源の輸出は好調で鉱業分野が成長を牽引している。日本との関係では、日・ペルー経済連携協定(EPA)に基づくビジネス環境整備小委員会が10月に開催され、進出企業の課税問題などが話し合われた。

チリもペルーと同じく銅が重要輸出産品で、国際価格の上昇に伴いGDP成長率も上昇基調にあり、2018年はペルーと同じ4.0%が見込まれる。中国からの投資が増えており、投資誘致機関インベスト・チリが2018年内に中国に事務所を設置する予定だ。

アルゼンチンは大規模な干ばつにより農業部門の不振に加えて、米国の利上げ、トルコ通貨危機などの影響で自国通貨が大幅に下落し経済的苦境にある。政府はIMFの支援を取り付け市場の沈静化を図るも、為替の下落を食い止めるため引き上げた年率60%の高金利が企業活動の重しになっている。2019年10月に大統領選挙を控え、政権の行方にも注目が集まる。

(二宮康史)

(ブラジル、中南米)

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