オーストリア企業が中国からセルビアに生産を移管

(セルビア、オーストリア)

ウィーン発

2018年10月26日

オーストリアの照明機器大手ツムトーベルは9月28日、3,000万ユーロを投資した発光ダイオード(LED)のランプおよびドライバーの製造工場(4万平方メートル)をセルビア南部のニシュで正式稼働させた。アルフレド・フェルダー社長は、同工場は中国の深センからコンポーネントの製造を移管したと説明。その理由として、納期の短縮と運送コストの低減、自社工程の比率を高めることによる下請けへの依存低減、高級照明機器製造企業として「中国製」イメージからの脱却を挙げている。

在セルビア・オーストリア大使館商務部のエリカ・テオマン・ブレンナー代表は、「セルビアは(オーストリアの)玄関前にある中国」と強調する。中国に比べて労働力の質は高いが、賃金は同水準である上、近隣のハンガリーやルーマニアと異なり、失業率は14%と依然として高く賃金の大幅上昇の気配はみられず、政府による外国投資家への支援も手厚い。2019年には、さらにオーストリア企業2社がセルビア南部に工場建設を予定しているという。

セルビア経済は、主に消費と投資に支えられ2018年第2四半期の実質GDP成長率(季節調整前)は前年同期比4.8%と好調だ。2018~2020年まで約3%のGDP成長率が予測され、経済は安定的な成長軌道にある。対内直接投資も順調で、2013年以降、毎年平均約20億ユーロが流入している(図参照)。オーストリアやドイツなど主要投資国の企業による進出のほか、日本企業も2017年に、ワイヤーハーネスの矢崎総業やシステム開発のSRAがセルビアに新たな拠点を設けた。

図 セルビアの対内直接投資額の推移

外資の進出相次ぐ第3の都市ニシュ

ツムトーベルが進出したセルビア第3の都市ニシュ(人口26万人)は、近年投資先として注目されている。優れた工科大学があり、同国の電気・電子産業のハブになりつつある。2014年以降、ドイツの自動車部品大手レオニ、香港のジョンソンエレクトリック、オーストリアのタゴルエレクトロニクスをはじめとする外国企業14社がニシュに進出し、製造拠点を設けている。

(エッカート・デアシュミット)

(セルビア、オーストリア)

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