銀行大手の上半期決算は好調も個人貸し出し過熱が懸念

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2018年09月28日

ロシアの銀行セクター大手の2018年上半期決算が出そろった(表参照)。最大手ズベルバンクの純金利収入は前年同期比6.1%増の6,825億ルーブル(約1兆1,603億円、1ルーブル=約1.7円)で、法人貸し出し部門では減収、個人貸し出し部門で増収となった。非金利収入のうち純手数料収入は、クレジットカードなどの取り扱い増加により24.9%増の2,081億ルーブルとなった。純利益は20.9%増の4,274億ルーブルだった。同行は2018年5月、在トルコの子会社デニズバンク売却をドバイのエミレーツNBDと合意。保有株式99.85%の146億トルコ・リラ(約2,628億円、1リラ=約18円)での売買取引を2018年内に完了する予定。

業界2位の外国貿易銀行(VTB)は上半期の純金利収入が前年同期比4.8%増、純手数料収入が7.0%増となり、純利益は66.2%増の982億ルーブルと大幅増益を達成した。

表 銀行大手の上半期・第2四半期業績(国際会計基準)

銀行セクターでは、法人向け貸し出しの低調が続く一方、住宅ローンなど個人向けの貸し出しが伸びる傾向に変わりはない(2018年6月14日記事参照)。一方、実質可処分所得は伸び悩んでおり、個人向け債権が貸し倒れに陥るリスクも指摘されている(「エクスペルトRA」8月20日)。中央銀行は個人向け貸出市場の過熱を抑制すべく自己資本比率規制を強化したが、十分な措置とは言えず、個人向け不良債権の多発を防ぐための追加的対応に迫られている。なお、中銀は9月14日の政策金利会合で、主要政策金利を7.25%から7.5%に引き上げることを発表した。通貨ルーブル下落を緩和するために3年9カ月ぶりの利上げに踏み切った。

2018年下半期は、米国の対ロシア制裁が銀行セクターに及ぶ可能性も警戒されている。米政府が8月27日に発動した追加制裁(2018年8月29日記事参照)により、90日以内にロシアが米国の要求に応じない場合、ズベルバンクやVTB、開発対外経済活動銀行(VEB)など政府が資本参加する銀行を対象とした、米国内資産凍結や取引制限などの措置が課される恐れがある。

(市谷恵子、高橋淳)

(ロシア)

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