農家景況感指数が急落、貿易摩擦の心理的影響が鮮明に

(米国)

シカゴ発

2018年08月21日

インディアナ州パデュー大学と、シカゴ先物取引所などを運営するCMEグループの共同調査によると、2018年7月の農家景況感指数(注)が2015年10月の調査開始以来、最大の下げ幅を記録したことが分かった。指数は前月の143から26ポイント減の117となり、2016年11月の大統領選挙以来の低水準となっている。

今回の急激な低下は、農作物価格下落の影響と貿易への先行き不透明感から、現在状況指数(Index of current conditions)が前月の138から99に、将来期待指数(Index of future expectations)が146から126へと大幅に低下したことが要因だという。

また、本調査を担当する同大学のジェームズ・ミンタート氏は「中国とメキシコによる米国産農作物への輸入関税が、生産者の収益に影響を与えている」と述べている。

同調査は毎月、50万ドル以上を生産する400戸の農業生産者を対象に、経営状態や先行きなど5つの質問を実施している。貿易摩擦による2018年の農家純利益の見通しを尋ねたところ、70%の生産者が純利益の減少を予想しているという。さらに、減益を予想する生産者に減益見込み額を追加質問したところ、1割以下の減益を見込む生産者の割合は29%、1割超から2割以下が36%、2割超が35%だった。

さらに、同氏によれば、農作物価格が2018年6月と7月に急激に下落し、生産者の間ではこの低価格が続き、場合によってはさらに価格が下落するのではとの懸念がみられるという。

こうした景気見通しの弱さから、調査結果では、生産者の73%(前月:60%)が農業機械などへの大型投資には悪い時期(bad time)だと否定的な見方を示しており、貿易摩擦による米国農業への懸念が、農業生産者の心理に如実に表れ始めている。

(注)5つの質問から相対的な点数(最大200点、最低0点)を計算・合算し、2015年10月から2016年3月の基準期間の平均値で割って算出する。指数が上昇すれば景況感の改善を、下降すれば低下を示す。

(仁平宏樹)

(米国)

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