貿易紛争に勝者なし、リー首相が独立記念集会演説で警鐘

(シンガポール)

シンガポール発

2018年08月24日

リー・シェンロン首相は8月19日、独立記念集会(ナショナルデー・ラリー)で演説し、冒頭、米中貿易紛争は企業心理に影響を与え、多国間貿易システムを脆弱(ぜいじゃく)にし、世界の繁栄を脅かすと述べ、「(紛争に)勝者はいない」と警鐘を鳴らした。リー首相は特に、開かれた小国は影響を受けやすく、「シンガポールも打撃を受ける」と懸念を示した。ナショナルデー・ラリーは例年、独立記念日(8月9日)の約2週間後に行われている。

リー首相は、貿易摩擦が国家間の信用失墜や緊張感・敵対心を一層強めるとし、経済面のみならず、平和、安全保障、安定性も危険にさらされると指摘した上で、「全ての国は自制的かつ知性を持って行動し、現在の課題を乗り越え、ともに前進するための新たな手段を探すことを望む」と述べた。

高速鉄道や水供給など合意の尊重を訴え

またリー首相は、不透明な世界情勢の中、ASEANの加盟国各国との関係強化がより重要だとして、特に隣国のマレーシア、インドネシアとの関係強化の必要性を挙げた。5月に就任したマレーシアのマハティール首相が計画の見直しを表明しているシンガポール~クアラルンプール間高速鉄道(HSR)やシンガポールとジョホール州を結ぶ高速輸送システム(RTS)の2国間合意は法的拘束力のある契約だとし、「両国が条件変更に同意しない限り、実行しなければならない」と強調した。さらに、マハティール首相が求めるシンガポールへの水供給協定の水単価引き上げ交渉についても、「協定は順守されるべきものであり、取り決めに従って厳格に進めなければならない」とした。

リー首相は、シンガポールとマレーシアが引き続き安定して密接な関係を維持できれば、ウィンウィンの関係が構築でき、それぞれ国内の優先課題に専念できるとした。

国民の生活支援が演説の焦点に

なお、今回の演説は、(1)人口高齢化に向けた医療費負担の低減、(2)公共住宅の改修、(3)生活費の上昇に対する国民の懸念への対応など国民の生活支援が焦点となった。詳細は添付資料のとおり。

(源卓也)

(シンガポール)

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