大統領選の決選投票、現職のケイタ氏が再選

(マリ)

アビジャン発

2018年08月17日

マリ大統領選挙の決選投票が8月12日に行われ、7月29日の第1回投票で勝ち残った現職イブラヒム・ブバカール・ケイタ氏とスマイラ・シセ元財政相の一騎打ちは、大方の予想どおりケイタ氏が圧勝で再選された。8月16日に発表された公式暫定集計結果によると、得票率はケイタ氏が67.2%、シセ氏が32.8%だった。シセ氏は、2013年に実施された前回の大統領選決選投票でもケイタ氏に敗れている。

一部地方でイスラム過激派による襲撃や秩序混乱も予想されたため、投票は厳戒態勢の下で実施された。全国2万3,000カ所の投票所のうち、中・北部地方で490カ所が治安悪化のため閉鎖を余儀なくされ、一部の投票所では武装集団による襲撃が報告された。有権者数は800万人余り。投票率は、安全上の懸念に加えて、現職の再選がほぼ確実視されていたこともあり、34.5%と低かった。

野党は、反ケイタ共同戦線を張り、野党連合を結成して大統領選に挑んだが、第1回投票で敗北した候補者の支持をまとめることができず、決選投票前からケイタ氏の優勢が伝えられていた。結果として、野党陣営が明確な政策方針を打ち出せず支持者を動員できなかったことや、結束できずに票田が割れたことが敗因として挙げられる。

シセ氏陣営は、開票結果の発表前から投票プロセスに大規模な不正が行われたと訴え、選挙の無効を申し立てている。他方、EUの選挙監視団は、手続きの不備がみられたものの、不正はなかったと発表した。マリ政府によると、マクロン・フランス大統領やグテーレス国連事務総長は既に、ケイタ氏が当選を確実にしたことを受けて祝意を伝えたという。憲法院は、近く選挙結果について認定を行う。

マリでは、2012年の軍事クーデター発生後、イスラム過激派が北部を掌握し、フランスが軍事介入したが、情勢不安が続いている。2018年6月には、マリやニジェールなどサヘル5カ国が合同で参加する対テロ部隊の司令部が襲撃されるなど治安が悪化している(2018年7月19日記事参照)。EUをはじめ国際社会はこれまでに、同合同軍に対し総額4億1,000万ユーロの拠出を約束している。

2期目となるケイタ大統領には、長期にわたり混乱が続く北部のトゥアレグ民族との和平合意の履行とともに、治安改善が重要課題となる。周辺諸国へも影響を及ぼす政情の安定に向け国内の政治勢力をまとめ上げ、疲弊した経済の立て直しなど新たなかじ取りが求められる。

(渡辺久美子)

(マリ)

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