9月開始の国家健康保護スキーム、26州ほどが参加表明

(インド)

ニューデリー発

2018年08月30日

2018年度予算に盛り込まれた「国家健康保護スキーム」が、9月25日から開始される見込みだ。これは、約1億の低所得層世帯を対象に、年間50万ルピー(約80万円、1ルピー=約1.6円)までの医療費用を政府が負担するもの。同スキームについて、インド工業連盟(CII)でヘルスケア分野を担当するアンジュラ・シン・ソランキ氏と医療機器を担当するエリザベス・ジョセ氏に聞いた(8月23日)。

(問)同スキームの対象者は。

(答)「社会経済カーストセンサス(SECC)2011」で社会的・経済的弱者と分類された者で、その数は約1億世帯、5億人程度とみられている。対象者には専用のカードが発行され、施術の内容などの情報はITシステムで管理される。

(問)同スキーム実施の財源、保険料、保障内容などは。

(答)財源について、6割は中央政府が、残りの4割は各州政府が負担する。各州政府の財源は、州が設立した運営団体または保険会社が基金を形成し確保され、そこから医療機関に費用が支払われる。

同スキームの運営形式は州が設定するが、被保険者は原則保険料を負担しない。保障額は、診療、検査、施術、薬価を含め、1家族当たり年間最大50万ルピー。保障内容について、疾病の段階や症状に応じて、標準的な施術と医療費があらかじめ設定された上で医療機関への支払いがなされ、上記金額を超える分は自己負担となる。なお、インドの伝統医学であるアーユルヴェーダなども対象となる。

(問)同スキームはインド各州で実施されるのか。

(答)現在26州ほどが参加を表明しているようだが、財源負担が州の財政に大きく影響することから、直ちに導入できないという州もある。例えば、マハーラーシュトラ州は農民の債務帳消しに大きな予算を割いており、すぐには実施できないとしている。

(問)今後見込まれる需要は。

(答)スキーム活用を希望しても近辺に医療機関がない受益者向けに、各地に基礎的な医療を提供できる「保健センター」を設置することが求められており、民間医療機関に期待が向けられている。

(古屋礼子)

(インド)

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