自動車・同部品への追加関税、パブコメに反対表明相次ぐ

(米国)

ニューヨーク発

2018年07月04日

米商務省は6月29日、1962年通商拡大法232条に基づく自動車と同部品輸入を対象とした、安全保障調査に関するパブリックコメントの受け付けを終了した(2018年5月31日記事参照、注1)。7月3日午後6時(米国東部時間)の時点で同省は、企業や団体、個人などが提出した2,252件のコメントを公開している。

米国自動車工業会(AAM)、世界自動車メーカー協会(AGA)、自動車政策会議(AAPC)(注2)のほか、米国自動車部品工業会(MEMA)、全米自動車ディーラー協会(NADA)など主要業界団体は、価格上昇による販売減などを理由に、追加輸入関税賦課に反対のコメントを提出した。AAPCは、25%の追加関税賦課によって輸入車両の価格が1台当たり平均約6,000ドル上昇すると試算し、新車市場の縮小や投資活動の停滞、最大6万4,000人の雇用喪失、報復関税による輸出台数の減少など、米国内の自動車メーカーが受ける影響を強調した。MEMAは、生産からアフター市場に至るまで国内外で複雑に絡み合うサプライチェーンの実態を説明し、販売価格上昇が業界全体に与える負の影響に言及した。日本自動車工業会(JAMA)も反対するコメントを提出した。

米系自動車メーカーではゼネラルモーターズ(GM)が、外資系メーカーではトヨタ、ホンダ、日産、スバル、ダイムラー、BMW、ボルボ、現代、起亜などが反対コメントを出した。デンソーやパナソニック、マグナ(カナダ)、バレオ(フランス)など大手部品メーカーも反対コメントを提出した。

さらに、米国小麦連合会や北西港湾連合も、それぞれ報復関税の影響や取引量の減少を懸念する立場から、反対意見を投じている。

州政府や外国政府も懸念を表明

州政府では、トヨタとマツダが合弁会社設立を予定しているアラバマ州や、GMが生産拠点を構えるカンザス州が追加関税賦課への懸念を表明した。

外国政府機関ではEU、カナダ、メキシコ、韓国、日本などが7月19~20日にワシントンで予定されている公聴会への参加申請をした。日本からは在米大使館、ジェトロなどが参加申請をしている。

UAWとUSWは支持、安全保障への脅威を指摘

一方で、全米自動車労働組合(UAW)と全米鉄鋼労働組合(USW)は追加輸入関税賦課を支持した。UAWは、電気自動車のバッテリーとなるリチウムイオン電池や燃料電池、自動走行車などは次世代軍用車両にも応用される技術であることから、国内での開発、生産を保護する必要があると表明した。

(注1)商務省は6月21日、パブリックコメントの受付締切日を6月22日から6月29日へ延長した。

(注2)米国で販売する自動車メーカーは、3団体いずれかのメンバーとなっている。AAMは米自動車大手(ビッグスリー)やトヨタを含む12社で、AGAは主要な外資系自動車メーカー、AAPCはビッグスリーのみで構成される。

(大原典子)

(米国)

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