日産自動車、ケララ州と初のデジタル・ハブ設立の覚書を締結

(インド)

チェンナイ発

2018年07月18日

日産自動車とインド南部のケララ州政府は6月29日、社内業務システムや顧客向けサービスのデジタル化を推進するための拠点デジタル・ハブ設立に関する覚書を締結した。デジタル・ハブは日産にとって初のIT・ソフトウエア開発拠点で、今後、アジア、欧州、北米それぞれに設立する計画だ。

南部タミル・ナドゥ州のチェンナイ郊外にルノーと共同で設立した年産48万台規模の工場や、約7,000人のエンジニアを擁するアライアンス研究開発センターを持つ日産は、社内の主要業務システムおよび顧客向けITソリューションを開発することで、業務効率やサイバーセキュリティー、顧客満足度などの向上を図る。デジタル・ハブはケララ州の州都ティルバナンタプラムにあるIT産業特区「テクノパーク」に設置され、その後、本格稼働に向け、市内へ移設される予定だ。

コストや生活環境、人材の豊富さなどが決め手に

デジタル・ハブの設立について、日産のトニー・トーマス常務執行役員兼CIO(最高情報責任者)は「コストは間違いなく判断材料の1つだ」と述べている(「ビジネス・ライン」紙6月29日)。また、日産インディアオペレーションズのトーマス・クール社長は「インドにはベンガルールのような(著名な)IT集積地があるが、ティルバナンタプラムのような都市も快適な生活環境や豊富な人材を提供しており、新たに台頭してきている」としている(「ビジネス・スタンダード」紙6月30日)。

IT産業のさらなる振興を図りたい州政府

ケララ州政府はこれまで、他州に先駆けてIT産業振興に積極的に取り組んできた。1995年には、当時インド国内初となるIT産業特区「テクノパーク」の操業を開始。同特区を、マイクロソフトやオラクルなど370社が入居(2017年3月時点)するまでに発展させた。2007年にインキュベーション機関「ケララ・スタートアップ・ミッション」を設立するなど、スタートアップを育成するエコシステム整備にも着手している。加えて、2017年6月には「ITポリシー2017」を公布し、IT産業強化の姿勢を鮮明にしている。

ケララ州政府がIT産業の振興を図る背景には、州内に雇用を生み出す産業が少ないという長年の課題がある。ピナライ・ビジャヤン州首相は「日産の拠点設立に触発されて、テック・マヒンドラのような大手IT企業も州への投資に関心を示している。ケララ州のイメージはこれから大きく変わっていくだろう」と語った。

(榎堀秀耶)

(インド)

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