政府や経済団体、米中貿易摩擦の影響を懸念

(香港、中国、米国)

香港発

2018年07月18日

米中貿易摩擦が激化する中、香港特別行政区政府(以下、香港政府)および主要経済団体は7月16日、貿易摩擦の香港への影響に関する談話を発表した。

商務・経済発展局の邱騰華局長は、米国が発動を検討している2,000億ドル規模の中国製品に対する10%の追加関税が実施されれば、香港を経由する中国の対米輸出額の約3割に当たる836億香港ドル分(2017年実績ベース、約1兆1,700億円、1香港ドル=約14円)の輸出が影響を受けるとの見通しを示した。さらに米国による500億ドル規模の中国製品に対する関税賦課で影響を受ける品目を合計すると、香港経由の中国の対米輸出額全体の約半分に相当する1,300億香港ドル規模の品目が影響を受けると指摘した。

また邱局長は、米中双方による500億ドル規模の相手国製品への関税賦課による香港の年間GDP成長率への影響はマイナス0.1~マイナス0.2ポイント程度だろうとした上で、「当該試算は、2,000億ドル規模の中国製品に対する追加関税を考慮していない」と、今後の動向によっては香港経済への影響がさらに大きくなる可能性を示唆した。

香港工業総会の郭振華主席は、「(香港)政府に対しては、多方面のルートを通じ、中国本土でビジネスを行う香港の単独資本企業などに対する支援の強化を要望している」とした上で、「(中国本土に進出している)香港単独資本企業による貿易は香港を経由したものではなく、これら企業への影響は必ずしも香港政府が明示している影響には反映されていないが、実際には間接的に香港にも影響を与える」と指摘した。また、これら在中香港企業に対する輸出保険の提供やASEANなど新たな市場の開拓といった面で、政府のさらなる支援を求めた。香港中華廠商連合会の呉宏斌会長は、会員企業へのアンケート調査で、約3割の企業が米中貿易摩擦の業務への影響を懸念していると回答したことを明らかにした。

中国に進出している香港企業のASEANへの生産拠点の移転について、香港工業総会の郭主席は「(広東省に進出した香港企業の)東南アジアへの展開は、〔中国共産党広東省委員会の汪洋書記(当時)が推進した〕「騰籠換鳥」政策(産業構造調整・高度化政策)の実施以降本格化している。電子部品関連企業の中には、ASEANに生産拠点を移管している企業も少なくない」とした上で、「2,000億ドル規模の追加関税リストの中には電子製品が多く含まれている。今後、関連する企業が(ASEANなどで)新工場の設立など新たな投資を模索する可能性もある」との認識を示した。

(中井邦尚)

(香港、中国、米国)

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