上下水道サービスに民間事業者の参入を促す暫定措置令

(ブラジル)

サンパウロ発

2018年07月19日

テーメル大統領は7月6日、上下水道をはじめとした基礎衛生サービス(注)に関する暫定措置令844号に署名し、同法令が7月9日付官報に公示された。同法令は州政府、自治体が上下水道の整備、事業運営をするに当たり、民間事業者と契約することを後押しする内容となる。これまで自治体は入札をせずに、上下水道サービスを提供する州公社と契約することが可能だったが、同法令では民間事業者も参加するかたちで競争入札の導入を促すもの。

また今回、国家水資源庁(ANA)に、基礎衛生の公的サービスに関する規則を定める権限が付与された。ANAは2000年法令9984号により創設された環境庁傘下の機関で、主要河川などの水資源管理を担う。政府によれば、特に下水処理普及率は44.9%(2016年)と低く、同サービスの不足が貧困地域における公衆衛生悪化の一因と捉えられている。政府は今回の法令改正をきっかけに、サービスの普及と質の向上を図りたい考えだ。

ただし、今回の暫定措置令に対しては、賛否が分かれている。ブラジル民間上下水道事業者協会(ABCON)は7月11日付の声明で、市と州公社が自動的に契約更新をしているサービスに関して、民間事業者の参入機会を開き競争を促すとし、政府の法令改正を評価するコメントを出した。

その一方、ブラジル衛生州立公社協会(AESBE)は7月9日付の声明で、連邦政府は事業収益の見込める自治体のみに民間企業の参入を促し、収益性の低い自治体は州公社が担うかたちになると、改正を批判している。さらに、ブラジル規制局協会(ABAR)も7月9日付の声明で、本来、自治体の管轄である基礎衛生サービスにANAが実質的に規制・監督するかたちとなり、自治体の権限を制限することにつながると指摘している。同法令は既に効力を持つものの暫定措置令であるため、国会で正式な法令化手続きを取る必要がある。審議の進捗次第で、内容が修正、あるいは失効する可能性もある点に注意が必要だ。

(注)2007年1月5日付法令11445号によれば、「基礎衛生サービス(Saneamento Basico)」とは、上水道整備、下水道整備、都市清掃・廃棄物処理、都市排水設備を含む。

(二宮康史)

(ブラジル)

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