デジタル化を貿易・投資・通商ルールの視点で分析-2018年版「ジェトロ世界貿易投資報告」-

(世界)

国際経済課

2018年07月30日

ジェトロは7月30日、「ジェトロ世界貿易投資報告」の2018年版を発表した。報告では、世界の貿易、直接投資、および通商ルールについて、2017年以降の動向のほか、デジタル化をテーマに分析を行った。

2017年の世界の貿易額は3年ぶりに増加

2017年の世界の貿易額は前年比10.5%増の17兆3,162億ドル(ジェトロ推計)となり、3年ぶりにプラス成長に転じた。価格が上昇した資源関連や、半導体関連商品が大きく伸びた。2018年第1四半期に入っても、輸出入額ともに前年同期比で2桁の伸びが続いている。

しかし、米国は貿易救済措置だけでなく、国内法に基づく一方的措置を発動し始めており、多国間貿易体制は厳しい局面を迎えている。主要国が対抗策を打ち出している中、2018年上半期は世界の新規輸出受注の拡大ペースが鈍化、貿易制限的措置の連鎖への懸念が貿易に負の影響を与え始めているとみられる。

世界で存在感増す中国の対外投資

世界の直接投資をみると、対外直接投資残高に占める新興・途上国、特に中国のシェアが年々拡大している。中国など東アジア企業の存在感は対日投資でも高まっており、日本企業への資本参加やシェアリングビジネスなどに広がる。ただ、欧米で中国企業による買収への警戒感が高まる一方で、中国政府も対外投資管理を強化しており、中国企業の動向が注目される。

デジタル化がつなぐ国際経済

今回の報告では、デジタル貿易を(1)デジタル関連財貿易、(2)デジタル関連サービス貿易、(3)越境電子商取引(EC)、(4)越境データ・フロー、の4指標から分析した。世界のデジタル関連財輸出(ジェトロ推計)では、通信機器、半導体など、主に現在のデジタル化〔モノのインターネト(IoT)、データ量増大、人工知能(AI)/ロボットなどによる自動化の進展〕を牽引する商品の輸出額が伸びており、品目の新旧交代が進んでいる。他方で、近年、越境EC、越境データ・フローの伸びが著しい。

また、世界のデジタル関連企業による直接投資が増加傾向にあり、中でも中国など新興・途上国のシェアが拡大。日本企業と新興デジタル企業との連携による新たなビジネス展開の可能性が広がる。

2018年版の概要は、ジェトロの記者発表ページを参照。本文は「ジェトロ世界貿易投資報告」ページで公開予定。

(朝倉啓介)

(世界)

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