政府、イノベーション支援策のロードマップを発表

(フランス)

パリ発

2018年07月27日

ブリュノ・ルメール経済・財務相は7月18日、フランス政府としてのイノベーション支援の方向性や重要課題などを決める「イノベーション評議会」を立ち上げるとともに、政府が優先的に実施するイノベーション政策のロードマップを発表した。フランスを「破壊的イノベーション」の先進国に押し上げるのが狙いだ。

人工知能(AI)、モビリティー、医療、サイバーセキュリティーなど、社会的、技術的な面でカギを握る新産業の創出を支援する。具体的には、政府が2018年1月に設立した「産業・イノベーションのための投資ファンド」(注)が毎年、イノベーション支援として拠出する2億5,000万ユーロのうち、1億5,000万ユーロを同分野での産業支援に充てる。具体的なプロジェクトについては、ルメール経済・財務相やフレデリック・ビダル高等教育・研究・イノベーション相ら関係閣僚のほか、産業ガス大手エアリキードやフランス国立情報学自動制御研究所(INRIA)のトップらが中心メンバーとなる「イノベーション評議会」が各関係機関と協議の上で決定する。

ただし、AIについては既に、2018年3月にマクロン大統領が発表したAI戦略(2018年4月4日記事参照)に基づき、向こう3年間に1億ユーロを投資することが決まっている。AIを利用した医療診断技術やAIシステムの安全性・信頼性・有効性の改善などがプロジェクトのテーマとなる。

新産業の創出支援に加え、AI、宇宙、ロボット工学、IoT(モノのインターネット)などの分野で破壊的イノベーションを起こすような最先端技術を持つ「ディープテック」スタートアップ企業の創出・育成を図る。フランス公的投資銀行(Bpifrance)などを通じ、こうしたスタートアップに年間7,000万ユーロの資金を供給する。

また、欧州レベルでもより多くの大型プロジェクトを立ち上げるため、「欧州破壊的イノベーション庁」の創設を促進するほか、フランスと欧州とのイノベーションに関わる支援システムの統合を強化していく、とした。

(注)国が保有する株式の一部売却で得た100億ユーロの原資を年利2.5%で運用し、そこから得られる年間2億5,000万ユーロの運用益を破壊的技術革新支援に拠出するというもの。

(山崎あき)

(フランス)

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