経済財政相が辞任、ISC増税の反対運動影響か

(ペルー)

リマ発

2018年06月08日

ダビッド・トゥエスタ経済財政相が6月4日、選択消費税(ISC)の増税に反対するデモやストの影響が広がる中、辞任した。4月のマルティン・ビスカラ新政権発足時からわずか2カ月での辞任となった。ペルーでは、クチンスキー前政権以降、辞任した経済財政相は4人目となり、持続的な経済政策運営に支障を来している。ビスカラ政権下ではコルドバ生産相に続き、2人目の閣僚辞任だ。なお、6月7日にカルロス・オリバ新経済財政相が就任した。

持続的成長を目指す経済政策に変更はなし

ビスカラ大統領は、経済財政相の交代による経済政策の方向性に変更はない旨を強調した。また、新政権発足以降、経済は上向いており、経済財政省試算で4月のGDP成長率を6%と見込むほか、5月の月間インフレ率が0.04%とインフレターゲットを大幅に下回る水準にあり、安定かつ持続的な経済成長への懸念はないとした。

オリバ新経済財政相は、ウマラ政権下で住宅建設上下水道省副大臣やペルー中央準備銀行常任理事を務めたほか、米州開発銀行(IDB)勤務歴も有し、エコノミストとしての手腕に定評がある。全国経営者団体連合会(CONFIEP)のベナビデス会長は、拙速な経済政策の導入は民間投資に悪影響を与えるとし、オリバ氏との対話を求めている。

増税に対し産業界からは批判や要望

全国工業協会(SNI)は増税を受けて、全国紙の1面を用いて政府への反論を掲載した。財政赤字問題は、税収増のみならず歳出カットや徴税率の上昇など多角的な対策が必要であると反発している。また、ISC税の増税が行われたことは企業の競争力の悪化を招く上に、600万人超の雇用を抱える製造分野におけるコスト増が、フォーマル就労にもマイナスの影響が及ぶものと訴える。

なお、燃料への増税は製造業や交通部門など幅広く影響するため、産業界は交通部門に対する還付税の導入を求めている。

度重なる閣僚交代劇で、太平洋同盟の中で最もインフラ整備が遅れているペルー政府の機動力欠如を不安視する声も、企業から聞こえている。

(藤本雅之)

(ペルー)

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