欧州鉄鋼ユーザー産業8団体、EUのセーフガード措置に懸念表明

(EU)

ブリュッセル発

2018年06月28日

鉄鋼を素材として使用する欧州の8産業団体は6月26日、欧州委員会が鉄鋼に関連して進めている緊急輸入制限(セーフガード)調査について連名で意見書を提出、措置発動に懸念を表明した。欧州委は鉄鋼・アルミニウムに対する米国の追加関税賦課への対策として3月26日に、鉄鋼製品に関するセーフガード調査を開始すると発表(2018年3月28日記事参照)している。しかし、今回の意見書で、自動車、農業機械、家電などを含む欧州側の主要な鉄鋼ユーザー各団体は「セーフガード措置は、欧州の川下産業(鉄鋼ユーザー)にとっては負の影響しかもたらさず、従って欧州の利益にかなっていない」と措置発動に対する警戒感をあらわにした。

鉄鋼価格上昇を警戒する欧州の川下産業

今回、意見書を提出したのは欧州自動車工業会(ACEA)、欧州自動車部品工業会(CLEPA)、欧州家庭用電気機器産業協会(APPLiA)、欧州建設機械委員会(CECE)、欧州農業機械工業連合会(CEMA)、欧州金属パッケージ協会、欧州機械・電気・電子・金属加工産業連盟(ORGALIME)、欧州送配電設備産業協会(T&D Europe)の8団体。「セーフガード調査の対象製品のうち多くの製品の貿易データは、(米国の追加関税賦課で市場を失った余剰鉄鋼の)欧州での輸入急増を裏付けてはいない」と主張する。また、欧州鉄鋼産業の2017年度の収益状況は好調で、2018年度も同様の見通しであり、欧州の製鉄所の稼働率も高水準である上、一部の鉄鋼生産者の生産能力不足に伴い、価格の上昇や納期遅延に至る事例もあるとしている。

さらに8団体は、欧州委などのEUの政策決定機関に対して「今後、数カ月の鉄鋼輸入状況を検証し、急増の動きがないか、その真の要因は何かを分析する必要がある」と指摘している。欧州の鉄鋼産業自身が2018年に欧州の鉄鋼需要が2%程度上昇すると予測しており、こうした良好な需要状況に対応して輸入が拡大するのは当然、というのが、8団体の見立てだ。この認識の上で、鉄鋼ユーザー産業団体は「(鉄鋼分野での)これ以上の通商措置が発動された場合、(鉄鋼輸入価格などを押し上げて)鉄鋼ユーザーを世界市場での厳しい競争にさらすだけだ」と警鐘を鳴らしている。

なお、鉄鋼の川上産業を代表する欧州鉄鋼連盟(EUROFER)も4月23日、EUとしてのセーフガード措置発動には慎重な対応を求める声明(2018年4月24日記事参照)を発表している。

(前田篤穂)

(EU)

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