プラユット首相、「総選挙は国王の戴冠式後」と明言

(タイ)

バンコク発

2018年06月25日

プラユット首相は6月19日の閣議後の記者会見で、「総選挙は(2016年12月に即位した)ワチラロンコン国王の戴冠式後に実施する」考えを表明した。

現在、軍事政権下にあるタイでは、国内秩序の維持のため政治活動が禁止されているが、2017年末以降バンコク市内では、総選挙の早期実施を求める小規模なデモが頻発している。プラユット首相はデモが起こるたび、「2019年2月に総選挙を実施する」とし、政治活動が解禁されるまで冷静さを保つよう国民に呼び掛けていた。

2019年2月実施の先送りを示唆か

しかしその首相が、開催日程が未定の「国王の戴冠式」後に総選挙を実施すると述べたことで、国内では首相が事実上、総選挙の先送りを示唆したとの見方もあり、早期実施を求める一部の政治団体から反発が強まる可能性が出ている。

プラユット氏が陸軍司令官当時の2014年5月に軍事クーデターを決行、民主的な手続きを踏まずに誕生した現政権は、欧米諸国から強い反発を受けていた。特にEUとはあらゆるレベルで政治的な接触が凍結されていたが、プラユット首相が2017年10月に総選挙日程を2019年2月までと明示したことから、政治的な交流が再開し、在タイ日系企業が強く望んでいるタイ・EU自由貿易協定(FTA)交渉が再開する兆しも見えていた。

そのため、今回のプラユット首相の発言が、こうした他国との関係改善に水を差すのではないかとの懸念も広がっている。なお、国王の戴冠式の日程について、ウィサヌ副首相は「戴冠式の日程は、国王がお決めになることであり、(6月19日に開催された)閣議でも議論になっていないため、分からない」とコメントした。

(阿部桂三)

(タイ)

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