2018年のGDP成長見通し、INSEEが1.7%に下方修正

(フランス)

パリ発

2018年06月25日

国立統計経済研究所(INSEE)は6月19日に景気報告書を発表し、2018年のフランスの実質GDP成長率を1.7%と予測した。政府が4月に閣議決定した中期財政計画(2018~2022年)案の見通し2.0%を下方修正した(2018年4月18日記事参照)。2017年の実質GDP成長率は2.3%だった。

INSEEは景気報告書の中で、2018年の景気を「雲がかかった空」と表現した。GDPのうち景気を牽引する内需は、個人消費が1.0%増と前年(1.1%増)と同水準で堅調に推移するものの、前年に4.4%増と好調だった民間設備投資は3.1%増に減速する(表参照)。企業の業況感は建設業を除く全ての業種で2017年末をピークに鈍化傾向を示しており、工業生産は2018年通年で前年比1.2%増と2017年に比べ伸びは半減する、とした。これを受け、雇用創出ベースも鈍化。2017年の失業率は前年から1.0ポイント改善し9.0%だったが、2018年は8.8%と小幅な低下にとどまると予測している。

表 主要経済指標

他方、輸出はエアバス航空機、農産物を中心に4.4%増と(前年4.7%増)と好調な伸びを保つことから、外需(純輸出)はGDPを0.5ポイント押し上げると予測した。

INSEEは今後のリスク要因として、欧州の政治不安(イタリア、スペインで誕生した新政権の政策運営、英国のEU離脱に向けた交渉の行方)、貿易拡大の重荷となる保護主義の広がり、(米国、中国、欧州の間の)貿易摩擦の深刻化などを挙げた。

中央銀行のフランソワ・ビルロワドガロー総裁は6月20日、フランスの景気減速を示した今回の発表を受け、「景気が鈍化しているのは、世界経済全体が減速していることもあるが、2017年の成長率が例外的に高かったからだ」「空は曇っているが、天気はまだ良い」「景気循環の転換を意味するものではない」などと強調した。

なお、中央銀行は6月14日、景気の「一時的な減速」を理由に2018年の実質GDP成長率見通しを従来の1.9%から1.8%に下方修正している。

(山崎あき)

(フランス)

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