日本-インドネシア税務交流会がジャカルタで初セミナー

(インドネシア)

ジャカルタ発

2018年06月28日

インドネシア国税総局(DGT)のロベルト総局長は6月25日、「日本-インドネシア税務交流会」がジャカルタで初めて開催したセミナーで講演し、「OECDの行動計画に準拠してBEPS(税源浸食と利益移転)への対応を進めていく」ことをあらためて表明した。

国税総局、移転価格重視の姿勢

インドネシア財務省は2016年12月から、OECDのガイドラインに基づく移転価格文書化規定を導入しており(2017年3月9日記事参照)、移転価格重視の姿勢を示した。セミナーには、日系企業の担当者125人が参加した。ジョン国際局長は「2016年に国際局が発足し、移転価格事前確認(APA)や相互協議(MAP)の専門部署を設けている」と述べ、税務紛争の解決のための制度運用に取り組む姿勢を示した。

納税者からの積極的な情報提供を呼び掛け

パネルディスカッションでは、APAやMAP運用時の課題として、手続きの長期化や納税者と当局の情報格差を取り上げ、円滑に制度運用するための方策が討議された。ジョン局長は「当局が適正なポジショニングを行うためには、案件のビジネス実態を詳しく知る必要があり、そのためには納税者から正確・適切な情報提供をいただくことが何より大切」と述べ、「本社のトップマネジメント層による主体的な参画を期待したい」と、納税者からの積極的な働き掛けを求めた。また、アミン国際局課長は「子会社によるマーケティングやリサーチ、アレンジメントなどの活動については、それが付加価値を生み出しているのか、ルーティーン業務なのか、ビジネス実態に基づいて評価する」と発言し、本社との利益配分について、インドネシア子会社側で生んでいる価値を精査することを強調した。

国税総局は、企業のキャッシュフローを改善するための制度として、2018年4月に過払い法人税および付加価値税の早期還付制度を改定し、一定の要件を満たす国内法人に対して、従来の10倍となる10億ルピア(約780万円、1ルピア=約0.0078円)までの過払い額を、税務調査前に還付する仕組みを導入したことを明らかにした。

セミナーを主催した「日本-インドネシア税務交流会」は、日本・インドネシア両国の税務機関での勤務経験者による交流会で、2018年2月末に税務事情の相互理解を促進するために発足した。代表を務める元インドネシア国税総局顧問の伏見俊行・日本大学経済学部教授は「今後、セミナーや共同研究などの活動を実施していく」と計画を述べた。

(山城武伸)

(インドネシア)

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