全国賃金評議会が2018/2019年度のガイドラインを発表

(シンガポール)

シンガポール発

2018年06月12日

政労使の代表で構成する全国賃金評議会(NWC)は、5月31日に発表した2018/2019年度(2018年7月1日~2019年6月30日)の賃金ガイドラインで、労働生産性の改善により利益の増加があった企業について、一時金の支給を通じて社員に利益の一部を還元するよう勧告した。特に、基本月給が1,300シンガポール・ドル(約10万6,600円、Sドル、1Sドル=約82円)以下の低所得者については、300~600Sドルの一時金を一括、または分割支給して、労働生産性の改善による恩恵を還元するよう提言した。

業績と今後の見通しに応じて3つのガイドラインを設定

NWCは人材省、全国労働組合会議(NTUC)、シンガポール国家雇用者連合(SNEF)や日本を含む外国商工会議所などの代表で構成され、景気や雇用市場の動向、経済見通しなどを勘案して、その年の賃金改定の指針となるガイドラインを毎年発表している。

NWCは今回のガイドラインで、前年度(2017年6月20日記事参照)と同様、個別企業の経営業績と見通しの状況に応じた3つの個別ガイドラインを設定した。まず、(1)業績と今後の見通しがともに好調な企業に対し、ベースアップと業績に応じて変動可能な可変給の支給の両方を勧告した。(2)業績が良くても今後の見通しが不透明な企業に対しては、ベースアップについては慎重な姿勢を勧める一方、業績に応じた可変給の支給を求めた。(3)業績も見通しも厳しい企業に対しては、賃上げの抑制を勧告した。

低所得者層の基本月給の下限を1,300Sドルに引き上げ

一方、今回のガイドラインも前年と同様に低所得者の賃金底上げを、引き続き重視する内容になった。NWCは、勧告対象となる低所得者層の基本月給の下限をこれまでの1,200Sドルから、1,300Sドルへと引き上げた。同評議会は2012年以降、毎年、低所得者層の所得を底上げするため、賃上げで具体的な数値目標を設定している。その上で、雇用主に、低所得労働者にSドルベース、%ベースの双方での賃上げを勧告。また、月給1,300Sドル以下の労働者に50~70Sドルのベースアップを提言した。さらに、月給1,300Sドルを上回る労働者については、そのスキルと生産性に応じた適正な賃上げか、一時金、またはその両方の支給を勧告している。

手続き上、NWCでガイドラインを設定後、人材省が了承して発効となる。人材省は同日、同ガイドラインを了承したと発表した。NWCの勧告の全文は人材省のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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