朝鮮半島情勢にインフラ整備などを含め積極関与の姿勢-「米朝首脳会談」に対する見方-

(ロシア、米国、北朝鮮)

欧州ロシアCIS課、モスクワ発

2018年06月15日

6月12日の米朝首脳会談に関するロシアでの論調は、朝鮮半島を中心とする東アジアの緊張緩和に資すると一定の評価をしつつ、その中身については不明な点が多く今後とも注視が必要としている。

政府は、米朝首脳会談前からセルゲイ・ラブロフ外相の北朝鮮訪問や中国の王毅外相との会談など、朝鮮半島情勢に関与する姿勢を積極的に打ち出しているほか、経済面でもロシアからの鉄道敷設、天然ガスパイプライン敷設などの構想にあらためて言及し、エネルギーや物流を中心に関与していく姿勢も示している(プーチン大統領のコメント6月4日)。

朝鮮半島問題の専門家であるモスクワ国際関係大学のゲオルギ・トロラヤ氏は、署名された共同声明の中身は一般的な内容で、過去に両国のやりとりの文書で交わされた内容を繰り返しているのみだが、今後北朝鮮は核弾頭の製造停止や保有削減を行う可能性もあるとコメントしている(「ベドモスチ」紙6月12日)。米朝会談前の論調でも、11月の中間選挙をにらんだトランプ大統領と政権基盤を強化したい金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長のそれぞれの思惑から、両国は外見上妥協するだけで本質的な問題解決は望めず、北朝鮮は米国が経済制裁を部分解除する条件で、あまり重要でない案件を前進させるだろうと予測されていた(「コメルサント紙」6月4日)。

なお、2017年の両国間の貿易(ロシア側統計)は、ロシアから北朝鮮への輸出は7,400万ドルで、うち鉱物性燃料などがシェア83%の6,200万ドルを占める。北朝鮮からロシアへの輸出は400万ドルで衣料品が中心となっている。

(高橋淳、齋藤寛)

(ロシア、米国、北朝鮮)

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